作りかけの山車が何台も並ぶ大広間で、オズワルドさんは目を輝かせていた。
オズワルド「トロイメアのお姫様がゲストだなんて、盛大なパレードになるよ。だから特等席は君のもの。いいね?」
オズワルドさんの言動に、知らず胸が高鳴っていることに気づく。
オズワルド「それじゃあ、○○ちゃん。他の山車もたくさんあるから紹介してあげよう」
そう言いながら、オズワルドさんの手が私に差し出される。
○○「……ありがとうございます」
なぜか気恥ずかしさを感じ、控えめにその手を取ると……
○○「っ……!」
オズワルド「広間は広いから、これで移動しよう」
オズワルドさんに再度、ぐっと抱き上げられたかと思えば、機械仕掛けの、スケートボードのような乗り物に二人で飛び乗っていた。
○○「あっ」
体がふわりとボードの上に降ろされ、今度は抱きかかえるように腰に手を回される。
オズワルド「じゃ、出発進行~♪」
すぐさまボードが機械音を鳴らし、滑るようにして広間を移動し始める。
○○「すごい……!」
オズワルド「そりゃどうも。もうだいぶ前に作ったやつだよ」
見上げると、オズワルドさんの顔が間近にあった。
(……っ、私、この乗り物に夢中になってて)
抱き寄せられている体勢であることに今さらながら気づき、頬が急速に熱を持つ。
○○「っ……」
恥ずかしさに、思わずオズワルドさんと距離を取ろうとすると……
オズワルド「っと、危ないよ!」
体勢が崩れそうになり、さらにきつく抱き寄せられてしまった。
(心臓がうるさい……)
加速するスピードと共に鼓動を速めてしまっているうちに、やがてボードは一つの山車の前で停止した。
オズワルド「さてまずは、この山車から紹介しようか。これは蜂の形をあしらったものでね。蜂がぶんぶん、不規則に飛ぶように……くるくる回る仕組みなんだよ。」
黄色と黒で鮮やかにカラーリングされた山車は、たくさんの花で装飾されていた。
○○「わあ……かわいらしいですね」
オズワルド「それからこっちは……パレードの順番を抜かしてしまうせっかち卵だ。」
そのネーミングにくすりと笑うと、オズワルドさんは意図通りといった顔でほくそ笑んだ。
オズワルド「僕らの山車も抜かれちゃうかも。後、ボールのように弾むのが特徴の。掟破りな山車だね」
○○「え? そんな動きで危なくないんですか?」
オズワルド「ふふふ、ちゃんと考慮済みだよ! 当日を楽しみにしてて」
いたずらを思いついた子どものような笑顔を向けられ、私の頬も緩んでしまう。
オズワルド「それにこれは……」
それからも順番にオズワルドさんから山車の説明は続いた。
(楽しいな)
オズワルド「トロイメアのお姫様がゲストだなんて、盛大なパレードになるよ。だから特等席は君のもの。いいね?」
(オズワルドさんが言うなら……)
意気揚々と話し続けるオズワルドさんの帽子についている花が、楽しそうに揺れていた…―。