第3話 魔法の瞳

オズワルド「あぁ、そうだった。君ももちろん参加させてあげるからね!」
○○「え……?」

その晩…―。

私は部屋で一人、オズワルドさんの言葉を思い返していた。

(……私が山車の上に乗るなんて。オズの感謝祭なのに……部外者の私がそんな参加の仕方をしてもいいのかな)

ベッドから起き上がり、そっと窓の外を覗いてみる。

(明るい……)

たくさんの電灯が立ち並ぶオズの街は、夜でも煌々と光り輝いている。

(オズワルドさんは、どういうつもりなんだろう)

落ち着かない気持ちになりながら、私はただ夜明けを待った…―。


……

翌朝…―。

城の大広間でパレードの準備をしていると聞き、足を運んだ。

オズワルド「……うん、そうだね。ここの装飾はもっと華美にして…―。ああ、ここは空けておいてね。僕がちょーーっぴり、細工するからさ」

職人「はい、かしこまりました」

まだ未完成の山車を前に、オズワルドさん達が着々と準備を進めている。

(すごく忙しそうだけど……)

○○「オズワルドさん、お疲れ様です。」

黙って盗み見ているのも忍びないと思い、声をかけてみると……

オズワルド「○○ちゃん!」

私の声に振り返ったオズワルドさんが、嬉しそうに微笑んだ。

オズワルド「ちょうどいいところに来てくれたねえ!今、君を乗せる山車の打ち合わせをしていたところだよ。ほらほら、おいで!」

イタズラでもするような楽しげな笑顔で、オズワルドさんが私に手招きをする。

○○「あの、オズワルドさん。山車に乗ることについてなんですが……」

言われるままに傍に寄りながら、私は昨夜考えていたことを打ち明けようとした。

オズワルド「ん? 乗り物酔いとかしちゃうタイプ? 随分と深刻な顔しちゃって。揺れないようには作ってるけど……まぁこの山車が完成すれば、一瞬で笑顔になるってもんだ!

○○「オズワルドさんっ!」

気がつけば進みつつある話を止めるように、慌てて口を開く。

○○「あ、あの! 私が山車に乗るのは、やっぱりちょっと…―」

するとオズワルドさんは、不思議そうな顔つきで眼鏡をくいと指で押し上げた。

オズワルド「そりゃまたどうして?」

○○「それは……やっぱり感謝祭は国をあげての大きな行事ですし。部外者の私が一番大きな山車に乗ってしまうなんて、あまりよくないと思います。それこそ、王子であるオズワルドさんが乗った方が、皆盛り上がるんじゃ…―」

オズワルド「うるさい口だね」

○○「っ……!?」

まだ話の途中で、オズワルドさんがぐっと私の腰を引き寄せた。

かと思えば……

○○「……っ!」

そのまま、私の体をいとも簡単に抱きあげてしまう。

○○「あのっ……!」

オズワルド「まあまあ、ここから見ててごらんなさいな」

少したしなめるような口調で言いながら、オズワルドさんが私を山車の上に座らせた。

○○「っ……」

一気に高く開けた視界が怖くて、ぎゅっと彼の腕を掴んでしまう。

オズワルド「大丈夫大丈夫、落としゃしないよ。君が落下しないようにきちんと設計しているしね」

○○「でも……ちょっと怖いです」

下をちらりと見て、思ったままの感情を口にすると……

オズワルド「大丈夫、怖くなくなるようにするから!とにかく、今回のパレードは、山車から見るのが一番最高なんだよ。だからぜひ、君にその景色を楽しんでもらいたくてね。そのために君を呼んだのに、辞退してしまうのかい?」

○○「それは……」

持っていた杖をくるりと器用に回した後、オズワルドさんは天井に向かい声を上げた。

オズワルド「トロイメアのお姫様がゲストだなんて、盛大なパレードになるよ!だから、特等席は君のもの。いいね?」

眼鏡の奥の瞳に、彼の底知れない熱意が垣間見える。

その視線に魅せられたかのように、気づくと私は頷いていた…―。

 

 

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