窓の外には、大きな虹が鮮やかに架かっている。
オズワルド「でも、こんなのまだまだ未完成なんだ! そこでね…―」
見事な作りの模型を見つめながら、オズワルドさんはニヤリと笑みを浮かべたかと思うと……
○○「え?」
突然、彼にぐいっと手を取られた。
オズワルド「再び街へ行ってみよー!」
○○「あ、あの…―!?」
戸惑う私には構わず、オズワルドさんは楽しそうに私の手を引く。
(相変わらず……自由な人)
こうして私達はまた、感謝祭の準備に賑わう街へ出ることになった…―。
再び街へやって来ると、オズワルドさんはしげしげと辺りを眺め始めた。
オズワルド「ふむ。メイン通りをこう過ぎて……おっと、ここにも工夫できそうな箇所が」
○○「山車が出る以外に、どんなことを考えているんですか?」
オズワルド「ふむ。いい質問だね」
眼鏡を得意気にかけ直す仕草に、期待に胸を膨らませていると……
オズワルド「何を隠そう、絶賛模索中だよ!」
またしても、帽子の中の電球がまばゆく点灯した。
○○「……」
(つまり……まだ考えていないってことだよね?)
オズワルド「あのバルコニーは何かしら使えそうだけど……」
そうつぶやくなり、珍しい形の巻き尺を取り出して、高いバルコニーの距離を測り始めた。
(オズワルドさんは、魔法は使えないって言うけど……きっと、魔法みたいに素敵なことを考え出すんだろうな)
オズワルドさんの様子を見ながら、そんなことを考えていると……
オズワルド「おや、この巻き尺にそんなにも興味があるのかい? あ!それとも僕に興味が……?」
○○「え……?」
ふわりと巻き尺が私の手首に巻きついて、そっと引き寄せられる。そのままお互いの顔の距離が、ぐっと近づいて……
○○「あ、あの……っ」
急に近づいた距離に顔の火照りを感じ、思わず視線を逸らしてしまう。
オズワルド「あらっ、少し、からかいすぎたかな」
○○「っ……!」
オズワルドさんは嬉しそうに目を細めると、するりと巻き尺を外し、私を解放してくれた。
オズワルド「ほんの冗談だよ。それよりも、パレードにどんな仕掛けを仕込むか、考えないと。ただ、山車が行き過ぎるだけじゃ、芸が足りないよねぇ……」
○○「仕掛け……」
オウム返しにしてしまうと、オズワルドさんが高らかに声を出す。
オズワルド「胸が躍るねぇ。こうして考えている時間が僕は特に好きだよ。あぁ、そうだった。君ももちろん参加させてあげるからね!」
○○「え……?」
驚く私の前で、オズワルドさんが大通りを改めて見渡す。
オズワルド「ここを走る一番立派な山車の上に、○○ちゃんを、乗せてあげるのさ!」
○○「えぇっ……!」
思いもよらない彼の提案に、私は開いた口が塞がらなかった…―。