虹の国・オズ 陽の月…―。
今日もオズの国に、人々の賑やかな声と忙しない機械音が響く。
(あの機械も、オズワルドさんが作ったのかな?)
遠方に回る大きな二つの歯車を見て、私はこの国の王子であるオズワルドさんのことを思い浮かべた。
(オズの魔法使い……じゃなくて、技術屋なんだよね)
昔、エメラルドの都とよばれていたこの場所は、オズワルドさんが現れてからオズと改名されたという。
未発達だったこの国を発展させたオズワルドさんの技術を、人々は『魔法』だと信じているけれど…―。
オズワルド「だから、魔法じゃなくて技術だよ、ギジュツ! 何回言えばわかってもらえるのかな…」
こんな調子で、オズワルドさんは結局『オズの魔法使い』として皆から慕われていた。
(確かこの辺りで会おうと、手紙には書かれていたはずだけど……)
オズワルドさんからの手紙には、もうすぐ国の『感謝祭』が行われると記されていた。
(かわいい飾りつけ……リボンに風船に、それに……卵?)
街いっぱいに飾り付けられた、卵をまじまじと見つめていると…―。
??「やぁやぁ、○○ちゃん。迷わずに来られたかい?」
振り返ると、軽く帽子を上げて挨拶をするオズワルドさんが、そこにいた。
○○「オズワルドさん……!」
オズワルド「元気にしてたかい?」
彼の帽子にも、やはり卵が添えられている。
○○「今回は、楽しそうなお祭りにご招待くださってありがとうございます」
オズワルド「楽しそうだって思う? 見える? そりゃよかった! では、どのくらい楽しめるのか、くわしく見せてあげないとね!」
少しおどけた様子のオズワルドさんが、人差し指でくいと眼鏡を押し上げる。
その変わらない仕草に、私は自然と笑顔になっていた。
オズワルド「じゃ、さっそく行ってみよっか!こっちだよ!」
オズワルドさんの手が、そっと私の背中に添えられる。優しく触れた手のひらに、小さく鼓動が弾んだ…―。
オズワルドさんに導かれて、城の一室へと案内される。大きなテーブルの上にあったのは……
○○「っ……すごいです」
とても精工に作られた、ミニチュアの街の模型だった。一つの大通りを中心に、かわいらしい山車が連なっている。
オズワルド「ここはメイン通り。よって、この通りを華やかに多くの山車で演出しようと思っているんだよ」
○○「素敵です……! パレードですか?」
オズワルド「ご名答!」
感嘆の声を上げる私を見て、オズワルドさんの帽子の中の電球が、ピカッと嬉しそうに光った…―。