月7話 交わらない視線

小鳥のさえずりが朝の空気をふるわせている。

大会の熱も冷めやらぬまま、美しい朝を迎えた。

ノックの音と共に、ジークさんが現れる。

ジーク「おはようございます。プリンセス」

〇〇「ジークさん……」

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ジーク『私はあなたを……。 一人の男として、お慕いしている』

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昨日の告白を思い出して、顔が熱くなっていく。

(ジークさんのあの言葉って……)

彼の言葉の真意を確かめたいと思うけれど、なんとなく聞くことがためらわれてしまう。

ジーク「ああ、もしやまだお仕度中でしたら……私はこれで」

〇〇「い、いえ」

ジーク「そっ……そうですか……では何かあれば私に何でもお申しつけください」

私から目をそらしたまま、ジークさんは恭しく頭を下げた。

(ジークさん、どうしたんだろう。いつもなら真っ直ぐに目を合わせてくれるのに)

〇〇「私のことは大丈夫ですから、ジークさんもゆっくり休んでください。 昨日の疲れもあると思いますし」

ジーク「いえ、疲れなど!」

けれど私に向いた彼の視線が、すぐに横へとそらされてしまう。

(なんだか、様子が変)

〇〇「やっぱりお疲れなんじゃ……」

ジーク「っ……!」

ジークさんに近づこうと一歩踏み出すと、同じようにジークさんが一歩後ろへと下がった。

(え……?)

ジーク「……」

〇〇「ジークさん……?」

名前を呼ぶけれど、彼は顔をうつむかせたまま、その視線を上げようとはしなかった。

(どうして……?)

私を拒むように頑なに視線をそらすジークさんに、自分でも驚くほど寂しさが胸に押し寄せる。

(昨日、告白してくれた後からだよね……)

(もしかしてジークさんは、そのことを後悔しているのかな……?)

ジーク「プリンセス! どうしたのですか!? お顔の色が……!」

やっと顔を上げてくれたジークさんが、ハッと目を見開いて、私を心配そうに見つめてくる。

(私、どんな顔してるんだろう……)

自分が今どんな顔をしているのかもわからない程、胸が苦しい。

ジーク「少し横になられた方がいいでしょう! さ、こちらへ!」

どこかぼんやりと立ち尽くす私を、ジークさんが部屋へと促してくれた。

ジーク「さあ、ベッドに横になって……」

私の腕にジークさんの指が触れたかと思うと、すぐに勢いよく離れてしまう。

ジーク「し、失礼致しました……! で……出直して参ります……!」

〇〇「待ってください!」

私の言葉に、ジークさんがぴたりと立ち止まる。

〇〇「どうして、私を避けるのですか……?」

ジーク「私は……騎士です」

ジークさんが、苦しそうに語り出した。

ジーク「けれど……。 自分の気持ちが……あなたへの気持ちがどんどん大きくなって……抑えが効かない……。 これ以上、あなたに触れると……たとえあなたの気持ちを無視しても。 昨日のように抱きしめて、そしてこの腕の中から二度と離したくないと思ってしまう。 なので……しばらく、あなたと距離を取りたいのです」

〇〇「ジークさん……」

ジーク「あなたは何も悪くないのです……すみません……」

立ち尽くす私を部屋に残して、ドアが音を立てて閉めざされる。

どうしていいかわからずに、私はそっと胸を押さえた…-。

 

 

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