儀式が終わるなり、凍哉さんがこらえきれずに大きな声で笑い出した。
すると、湖に張った分厚い氷がいっせいに溶け出し……
冬は彼方へ遠ざかり、うららかな春が訪れた。
男性「神渡りの儀式が、春を運んできたぞ!」
皆は羽織っていた上着を次々と空に投げ、喜びに沸き始める。
凍哉「はは……っ! 皆、喜び過ぎ」
街の人の笑顔を眺めながら、凍哉さんがまぶしげに目を細める。
(凍哉さんの笑顔……初めて見た……)
ふと気づけば、凍哉さんの無邪気な笑顔に見とれていた。
(あれ、私……?)
凍哉「ありがとう……君のおかげで、なんとか最後まで笑わずにすんだ」
私を振り向いた凍哉さんが、優しい声で笑いかける。
凍哉「でも、君のせいで笑いそうになった、とも言えるけど」
(こんなふうに、優しく笑う人だったなんて……)
凍哉さんの笑顔と共に、暖かな春が訪れ……
私に心にも、ほのかな恋心が芽吹き始めていた…-。