月6話 恋のつぼみ

儀式が終わるなり、凍哉さんがこらえきれずに大きな声で笑い出した。

すると、湖に張った分厚い氷がいっせいに溶け出し……

冬は彼方へ遠ざかり、うららかな春が訪れた。

男性「神渡りの儀式が、春を運んできたぞ!」

皆は羽織っていた上着を次々と空に投げ、喜びに沸き始める。

凍哉「はは……っ! 皆、喜び過ぎ」

街の人の笑顔を眺めながら、凍哉さんがまぶしげに目を細める。

(凍哉さんの笑顔……初めて見た……)

ふと気づけば、凍哉さんの無邪気な笑顔に見とれていた。

(あれ、私……?)

凍哉「ありがとう……君のおかげで、なんとか最後まで笑わずにすんだ」

私を振り向いた凍哉さんが、優しい声で笑いかける。

凍哉「でも、君のせいで笑いそうになった、とも言えるけど」

(こんなふうに、優しく笑う人だったなんて……)

凍哉さんの笑顔と共に、暖かな春が訪れ……

私に心にも、ほのかな恋心が芽吹き始めていた…-。

 

 

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