未完成のまま起動させた大案山子一号は、暴走してしまった…-。
できる限りの手を尽くした後、リーヤさんは操縦席でうなだれてしまう。
リーヤ「やっぱりまだ駄目だったんだ……。 くそ……俺は、俺は……馬鹿だ。いくら知性をもらっても、馬鹿は馬鹿のまんまだ!!」
〇〇「しっかりしてください! リーヤさん」
再度、操縦桿に叩きつけかけた拳を必死で止める。
リーヤさんは、ひどく傷ついたような眼差しで私を見た。
リーヤ「だって、このままじゃカラスどころか街自体が崩壊だ……」
〇〇「諦めないでください……!」
リーヤ「……んなこと言ったって……」
〇〇「リーヤさんは、すごい努力家で、昔から知性を探して旅をしていたんですよね? 馬鹿にされないよう一生懸命に努力をして……。 今では、一国の主として、務めを果たしているんですよね?」
リーヤ「そんなのは……」
リーヤさんが、苦悶の表情を浮かべる。
リーヤ「どうせオズワルドからもらった知性だ。俺の努力なんかじゃねー……」
〇〇「そうだとしても、それを手に入れる力がリーヤさんにはあったんです。 リーヤさんは選ばれた人だし、リーヤさんのように頑張れる人でなきゃ駄目だったんだと思います」
リーヤさんの心に届くように、私は夢中で言い募った。
すると…-。
リーヤ「……駄目だ……」
リーヤさんの顔つきが少しずつ変わり始めた。
〇〇「え……?」
リーヤ「このままじゃ駄目だ……。 こいつの半分は、俺の魔力で動いてる。だから…-」
きらりとその瞳に輝いたのは、確かに……リーヤさんの持つ、特別な知性の輝きだった。
高揚感に、とくんと大きく鼓動が跳ねる。
リーヤ「来い! 〇〇!」
〇〇「え……?」
突然、リーヤさんが操縦席を放り出し駆け出す。
先の見えない行動に戸惑いながら、手を引かれた先は…-。
なんと、巨大な大案山子から出て、その目の前だった。
〇〇「リ、リーヤさん……?」
リーヤ「もう、これ以外に方法はねえ……。 お前は俺の後ろに隠れてろ」
有無を言わせぬオーラをまとい、リーヤさんが私を背後へ回す。
(いったい何を……する気なの?)
激しい胸騒ぎと、妙な高揚感を胸に抱えたまま……
荒れ果てた街中に降り立った私は、リーヤさんの背中を見つめていた…-。