街を襲ったカラスの撃退に、成功したと思ったのも束の間…-。
リーヤ「な、なんだよ! なんで止まらねーんだよっ!?」
〇〇「ど、どうしたんですか!?」
リーヤ「こいつ……止まらねえっ!!」
どうやっても、案山子が止まらなくなったらしい。
〇〇「リーヤさん、落ち着いたら何か方法が……」
リーヤ「落ち着いてるっつーの!! くそっ!せっかく、初回起動成功したと思ったのに……!」
巨大案山子は、勝手にずんずんと街を離れて行ってしまう。
(このままだと……本当にどうすればいいの!?)
リーヤ「仕方ねー、こうなりゃ緊急停止か」
〇〇「え。そんなのがあるんですか」
リーヤ「ああ、念のためな。けど、一回押しちまったら……」
〇〇「あ、あの、どうなるんですか?」
リーヤ「……もうこいつは、ウンともスンとも動かなくなる。 一度は役に立ったんだ。これで壊れても、また……」
〇〇「リーヤさん……」
リーヤ「んなカオすんなよ。 このままだと国中ぶっ壊しちまうんだ。選択の余地はねえ」
リーヤさんが、覚悟を決めた顔で、緊急停止ボタンのカバーを壊す。
そして…-。
〇〇「……止ま、った……?」
不気味な音を立てて、巨大な案山子はその動きを停止した…-。
…
……
巨大案山子がやっと停止した場所は、街からは遠く離れた川の真ん中だった。
リーヤ「はぁ……最悪」
〇〇「でも、カラスは撃退できたんですから」
二人で操縦室から外へ出て、やれやれと肩を落とす。
リーヤ「最後まで完璧じゃないと、成功とは言えねーだろ」
リーヤさんが、もう何度目かのため息を吐きかけた時だった。
はっとしたように前方へ視線を向け、それから…-。
リーヤ「危ないっ!!」
私の体を強く抱き寄せ、かばうように包み込んだ。
(な、何!?)
驚いて心臓が暴れたのも一瞬のこと、次の驚きがやってくる。
なんと、カラス達がここぞとばかりに襲ってきたのだ。
リーヤ「っく、なんだこいつら……! 卑怯だぞ!」
リーヤさんは、私を片腕でかばいながら、カラスを追い払おうとする。
(数が多い……これじゃ駄目だ!)
なんとかしなければ、と思った時だった。
街の人1「おおおおお!!!」
街の人2「リーヤ様に何してやがるー!」
街の人々が大勢駆けつけてくれた。
その手には、光を反射する鏡や案山子、作り物の目玉があった。
リーヤ「なんだ……あれ……?」
突然の出来事にあっけに取られていたリーヤさんは、人々が手にするものに気づくと、歓喜の声を上げた。
リーヤ「やった! あいつら、すごいじゃねーか!」
大声と、一気に襲ってきた苦手なものの数々に、カラスが驚き羽ばたく。
それからすぐに、カラス達は退散していったのだった…-。