カラスの王達から宣戦布告を受けた翌日…-。
リーヤさんは、性急に計画を進め始めた。
リーヤ「クソ……っ、不本意だけど、オズワルドの野郎の手を借りたいくらいだぜ」
悔しげにつぶやきを落としつつ、リーヤさんは分厚い本をめくったり、猛烈な勢いで計算式を殴り書きしたりしている。
(カラスの一族が何か起こす前に、なんとかしないと)
私もその一心で、リーヤさんの手伝いをしていた、その時だった。
執事「しっ、失礼しますっ! リーヤ様っ」
リーヤ「あーっ、うっせーな! 今はそれどころじゃねーんだよ」
血相を変えて、執事さんが部屋に飛び込んできた。
執事「し、しかしリーヤ様!街が……っ」
リーヤ「街が……なんだと?」
迷惑そうにしていたリーヤさんが、手を止めて真剣な顔で振り返る。
執事「ま、街が、カラスの大群に襲われていると……! 街だけでなく、田んぼも家も、大惨事だと……!」
リーヤ「あいつら……」
(そんな、ひどい……)
どんな因縁がこれまであったにせよ、リーヤさん側は何も攻撃してなどいない。
それなのに……
リーヤ「こうなったら……。 こうなったらっ、大案山子一号を起動させるしかねえっ!」
〇〇「だい……かかし?」
(そんな名前だったんだ……)
リーヤ「まだ未完成だが……仕方ねえ!」
リーヤさんが、まだ完成途中の城型大案山子の、ねじを緩め、起動チェックを始める。
〇〇「リーヤさん、でもまだ危険では……!」
リーヤ「けど、今使わなくてどうすんだよ!」
鬼気迫るリーヤさんの様子に、それ以上何も言えなくなった。
…
……
かくして私達は、大案山子一号の最終点検を終えた。
リーヤさんが力強く、部屋にある起動スイッチを握りしめる。
リーヤ「急に起動させることになっちまったけど……ここまでの計算は完璧だ」
〇〇「はい、きっと大丈夫です」
リーヤさんの瞳が、私の視線を捕らえる。
計画を進める中で、幾度も輝いた知的な瞳の煌めき……
私の力はとても微力だけれど、二人で頑張ってきた感覚はとても強くて……
(お願い……無事に動いて!)
リーヤさんが、私の手を取り、起動スイッチに手を重ねる。
リーヤ「一緒に、押してくれるだろ?」
こくりと生唾を飲み込む音さえ聞こえそうな緊張感の中、リーヤさんの熱っぽい手と、無機質なスイッチの感覚を手に感じる。
〇〇「はい」
リーヤ「大案山子一号、起動…-!!」
がつんとスイッチが押し込まれる、確かな感触……
床が激しく揺れた。
リーヤ「〇〇……!」
リーヤさんが、肩を抱きすくめてくれたその時……
作り上げた案山子は、確かに起動したのだった…-。