目覚めさせたお礼に、領地でもてなすと言ってくれたリーヤさんの背を追って、歩いていく。
のどかな田園を抜けるとすぐに、蒸気機関が発達した賑わう街中に出た。
(すごい……さっきとは一変して、近代的な感じ)
それは一歩、街に足を踏み入れた瞬間のこと…-。
街の人1「リーヤ様だ!」
街の人2「リーヤ様が、お戻りになられたぞっ!」
私達はたちまち、街の人々に取り囲まれてしまった。
リーヤ「うわっ、なんだよ!」
街の人3「リーヤ様大変なのです! ご不在の間に、カラスが畑を……」
街の人4「リーヤ様、カラスが畑を……」
リーヤ「ああ? んなモン、案山子を立てときゃいーだろ。 首が5秒に1回、振れるやつだ。あいつら、全く動かねーと、脳みそがないってすぐ気づきやがる」
街の人5「ああ……天才だ。天才だ!」
街の人6「天才だあっ!」
街の人7「リーヤ様、ところで、案山子の首を振れさせるにはどうしたらいいですか」
リーヤ「それはだなあ…―」
それからしばらく、リーヤさんは街の人達の質問攻めに合い、面倒臭そうにしながらもすべて答えていた。
街の人7「おー、素晴らしい!」
街の人8「天才だあっ!!わあっ!」
街の人にもみくちゃにされながら、リーヤさんは困ったように帽子を目深に被った。
リーヤ「……ったく、ちったあ自分達の頭で考えやがれってんだ」
(天才だって皆から頼られて、すごいけど……リーヤさん、大変そう)
重いため息を吐くリーヤさんに、私は……
〇〇「リーヤさん、大丈夫ですか?」
翳った表情が心配になり、話しかける。
するとリーヤさんはぐいぐいっと乱暴に帽子を正し、険しい表情になった。
リーヤ「……別に、心配されるようなことは、何もねーよ」
ぶっきらぼうな物言いだけど、彼の表情はどこか寂しげだった。
(何か……あるのかな?)
気になりつつも、それ以上聞くなと言われているような気がして問えなかった。
リーヤ「あー、ほら、皆散った散った! ひとまず城に戻るから、案山子が駄目なら相談しに来い」
街の人「あ、リーヤ様……!」
リーヤ「いいか?5秒に1回の首が動く案山子が、駄目なら!だからな!」
リーヤさんは念を押すように強く言い切ると、ぐっと私の手を掴んだ。
(え……?)
リーヤ「街の奴らが集まってきてるからな。はぐれねーよにだよ!」
〇〇「は、はい……」
(リーヤさんって……)
言葉は乱暴だけど、彼の手からは優しさが感じられて……
騒がしい街を二人で抜けながら、私はリーヤさんの素顔がとても気になり始めていた…-。