第1話 冷たい風の中で

四季の国・蓬莱 凪の月…-。

まだ春と呼ぶには少し肌寒いある日、陽影さんから花見に誘われた私は、この国を訪れていた。

〇〇「寒い……」

肌に感じる冷たい風から身を守りながら、城へと歩き出す。

(お花見って聞いてたけど……)

通りに並ぶ桜の木を見上げると、枝をまだ小さな蕾をつけ始めたばかりのように見えた。

(約束の日、間違ってないよね……?)

少しだけ不安になった私は、陽影さんからの手紙を取り出そうと立ち止まる。

その時だった。

〇〇「っ……!」

不意に後ろから誰かにぶつかられ、視界が揺れる。

(転ぶ……!)

覚悟したその時、大きな手が私の腕を掴んで引き止めた。

??「っと、悪い! 大丈夫か?」

〇〇「は、はい……」

(びっくりした……転ぶかと思った……)

安堵から、私はほっとため息を吐く。

??「あれ、〇〇?」

〇〇「え……? あっ、陽影さん!」

名前を呼ばれて顔を上げると、そこには驚いたような表情を浮かべる陽影さんの姿があった。

陽影「なんでここに……もしかして手紙読まなかったのか?」

〇〇「え……?」

(どういう意味だろう?)

彼の言葉の意味が理解できずにいると、陽影さんはハッと何かを思い出したように、通りの向こうを見つめる。

陽影「そうだ! 悪いな、今急いでるんだ! あー……つっても、オマエを置いてくわけにはいかねーよな」

〇〇「えっ?……あの…-」

陽影「仕方ねぇ!〇〇も来てくれ!説明は後でする!」

〇〇「っ……!」

陽影さんは私の腕を掴んだまま、有無を言わさずに走り出す。

(陽影さん、いったいどこへ……?)

彼に腕を引かれるまま、私は慌てて走り出した。

 

 

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