四季の国・蓬莱 凪の月…-。
まだ春と呼ぶには少し肌寒いある日、陽影さんから花見に誘われた私は、この国を訪れていた。
〇〇「寒い……」
肌に感じる冷たい風から身を守りながら、城へと歩き出す。
(お花見って聞いてたけど……)
通りに並ぶ桜の木を見上げると、枝をまだ小さな蕾をつけ始めたばかりのように見えた。
(約束の日、間違ってないよね……?)
少しだけ不安になった私は、陽影さんからの手紙を取り出そうと立ち止まる。
その時だった。
〇〇「っ……!」
不意に後ろから誰かにぶつかられ、視界が揺れる。
(転ぶ……!)
覚悟したその時、大きな手が私の腕を掴んで引き止めた。
??「っと、悪い! 大丈夫か?」
〇〇「は、はい……」
(びっくりした……転ぶかと思った……)
安堵から、私はほっとため息を吐く。
??「あれ、〇〇?」
〇〇「え……? あっ、陽影さん!」
名前を呼ばれて顔を上げると、そこには驚いたような表情を浮かべる陽影さんの姿があった。
陽影「なんでここに……もしかして手紙読まなかったのか?」
〇〇「え……?」
(どういう意味だろう?)
彼の言葉の意味が理解できずにいると、陽影さんはハッと何かを思い出したように、通りの向こうを見つめる。
陽影「そうだ! 悪いな、今急いでるんだ! あー……つっても、オマエを置いてくわけにはいかねーよな」
〇〇「えっ?……あの…-」
陽影「仕方ねぇ!〇〇も来てくれ!説明は後でする!」
〇〇「っ……!」
陽影さんは私の腕を掴んだまま、有無を言わさずに走り出す。
(陽影さん、いったいどこへ……?)
彼に腕を引かれるまま、私は慌てて走り出した。