そして、プリンスアワード当日…-。
この日を待ちわびていたかのように、丸い月が煌々と街を照らしている。
出発の準備をしていた時、部屋の外で声がした。
使用人「〇〇様。お迎えの方がいらっしゃっていますが」
〇〇「え? お迎え?」
(お迎えなんて……)
カーテンをそっと開き、外を覗く。
すると建物の入り口に、キースさんが立っていた。
(キースさん!)
私は慌てて身支度を整え、部屋を飛び出した。
外は、式典へと向かう人々ですでに賑わっていた。
皆正装をし、心なしか胸を張って歩いていく。
その中に、一層輝くキースさんがいた。
キース「お迎えに上がりました」
キースさんが凛と姿勢を正し、お辞儀をする。
〇〇「あ、あの……」
キース「……エスコートのされ方も知らんのか」
〇〇「えっ」
キースさんの顔から笑みが消え、思わず声を上げてしまった。
キース「ドレスの袖を摘まみ、軽くお辞儀をして、腕に手を添える」
〇〇「……」
(キースさん? いったい……)
キースさんの真意が知りたくて、私は彼をじっと見つめた。
(もしかして、プリンスアワードに……?)
微かな期待を、胸に募らせていると…-。
キース「どうした」
〇〇「……! いえ」
言われた通りお辞儀をし、キースさんの腕にそっと手を触れる。
彼の顔を見上げると、柔らかい微笑みが降ってきた。
キース「では、参りましょう……〇〇姫」
〇〇「は、はい」
すぐ傍に見えるキースさんの笑顔に、胸が高鳴る。
(頬が、熱い……)
キースさんが、私の歩調に合わせて歩き出す。
キース「足元、気をつけて」
〇〇「はい」
彼の腕に触れた手に、力がこもる。
並んで足を進めるほどに、胸がトクトクと音を立てていた…-。