衛兵「それが……城の外に城下町の者達が集まり、リオン様に嘆願をと…―」
衛兵に連れられて、広間に街の住人達が現れた。
老婆、若い娘に働き盛りの若者と、その年や性別は様々で……
リオン「一体、皆どうしたの?」
老婆「それが……最近めっきり花の持ちや咲きが悪いんです」
若者「おかげで花を出荷した他の国のお得意さんからも文句が来ちまって」
リオン「……え」
住民達の訴えを聞いたリオンくんの顔が、見る間に青くなっていく。
(リオンくん?)
リオンの兄1「……リオン、まさかとは思うがお前、大地と水の女神様への祈りを疎かにしてはいないな?」
リオンの兄2「そんな……あの祈りは毎日欠かさずに捧げなければいけないものですよ!」
リオン「僕……今日の昼は…―」
○○「……!」
昼時と言えば、ちょうど私が城にやってきた時間帯だった。
(もしかして、私が来たせいで…―)
○○「あの! それは…―」
事情をお兄さん達に説明しようとすると……
リオンの兄2「黙っていてください、これは私達兄弟の問題ですので」
○○「……っ」
遮るように言われて、私は口をつぐんでしまう。
リオンの兄1「どういうことか説明するんだ、リオン!」
リオンの兄2「そうですよ、理由があるならちゃんと私達に説明しなさい」
リオン「……」
お兄さん達からの非難を一身に受けて、リオンくんの肩が震える。
やがてリオンくんは、絞り出すように口を開き始めた。
リオン「……だって……僕だって、お兄ちゃん達みたいに本当は……」
(リオンくん……)
リオン「けど王子様に選ばれたからって、僕ばっかり城の中なんて……。 皆は自由に外を旅していられるのに……そんなの、絶対ズルいよっ!!」
大きな緑色の瞳に薄らと涙を浮かべ、リオンくんは、堰を切ったように言葉を放った。
リオン「僕だって、自由に世界を旅したいよ!!」
そう言うと、リオンくんはその場から駈け出した。
リオンの兄1「リオン……!」
○○「リオンくん、待って…―!」
リオンくんを追って、私もその場から駈け出した…―。
…
……
太陽の光の下、そよそよと小さな花達が風に揺れている。
(リオンくん、どこへ……?)
姿を追って城を出たものの、私は途中で彼の姿を見失ってしまった。
○○「リオンくん! どこにいるのー!」
名前を呼びながら、城の裏手へ向かうと…―。
○○「……!」
花畑の中で、膝を抱えているリオンくんを見つけた。
リオン「僕だって城の外に出たいのに……。 このタンポポの綿毛に乗って、今すぐ遠いどこかに行けたらいいのになあ」
リオンくんはこちらに気づかないまま、じっと空を見つめていた。
○○「……っ」
リオン「誰!?」
私が足元で小枝を踏みつけた音を聞いて、リオンくんが顔を上げる。
エメラルドグリーンの瞳には、薄らと涙が浮かんでいるようだった。
リオン「○○……」
私の姿を見ると、リオンくんはぎゅっと唇を結んで、その涙を耐えた…―。