春風のようなリオンくんとの出会いから、一週間後…-。
私は彼との約束通り、もう一度ヴィラスティンの地を訪れていた。
街の人に道を聞き、タンポポの一族の城にようやくたどり着いた。
(えっと、リオンくんはどこに?)
あの元気な姿をもう一度見たくて、城の中を探していると、
窓の外をぼんやりと見つめているリオンくんの姿を見つけた。
○○「あ、リオンくん…-」
だけど、かけようとした声を思わず飲み込む。
リオン「……」
(どうしたのかな?)
この前、花畑で会った時とは別人のように、まるで元気がない。
○○「リオンくん、どうしたの?」
リオン「……君は!」
大きな目をまばたきさせて、取り繕うような笑みを彼が浮かべる。
リオン「ううん、なんでもないよっ!」
○○「……リオン君? 本当に大丈夫?」
心配になって、彼の顔を覗き込む。
リオン「別に、本当に普通だよ」
○○「……」
リオンくんの視線は、私から微かに逸らされる。
(やっぱり、なんだか様子がおかしいような……どうしたんだろう?)
気になってその視線の先を見れば…-。
城の侍女達「……」
回廊の奥の方にいる数人の侍女達が、ひそひそと何かを話しながらこちらを見ていた。
(この視線……何だろう?)
ふと服の裾を掴まれて、私は視線をリオンくんへと戻す。
彼は頬を膨らませて侍女達の方を気にしているけれども、時折こちらに目配せを送ってくる。
○○「リオンくん? な、何……?」
すると……
○○「……っ!」
不意に腕を引かれて、体が前のめりそうになった。
リオン「……」
気がつけば、目の前にリオンくんのかわいらしい顔があって……
(大きな瞳……)
すがるようにその瞳が、私の顔をじっと見つめてくる。
(そんなにまっすぐに見つめられると、落ち着かない……)
リオン「……あのね、外に出ない?」
○○「えっ?」
リオン「僕が合図したら城の窓から飛び出すから…-」
○○「飛び……出す……?」
彼から伝えられたその言葉に、私は目を丸くしたのだった…-。