第1話 タンポポの王子様

花の精の国・ヴィラスティン 陽の月…-。

どこまでも続く黄色い花畑を、そよ風が撫でる。

その柔らかな風に包まれて、かわいらしいタンポポの王子様が目を覚ました。

リオン「ふわぁ・・・…おはよー……ん? 僕、なんでこんなところで……」

○○「……あなたがリオンくん?」

リオン「うん! 君が僕を起こしてくれたの? えへへ、ありがとう……! 今日は風も気持ちいいし、君みたいな子に出会えるし、なんていい日!」

腕を空に突き出して、リオンくんが大きく伸びをする。

よく動く無邪気な瞳と、まき毛の柔らかな金髪が愛らしい。

(まるで空から降りてきた天使みたい……)

その時、大きな風が駆け抜けて、花畑から大量の綿毛が舞い上がった。

○○「……!」

リオン「ふふふ、いい風! ねえ、僕と一緒に風に乗ろうよ♪」

○○「風……?」

リオン「うん、タンポポの綿毛に乗って、どこまでも旅をするんだ。 あ、でもこの風だと、今日は二人はちょっと無理かなぁ?」

風に人差し指を立てて、かわいらしい唇を尖らせる。

リオン「ごめんね。今度、君が僕の国に来た時……その時は、きっと一緒に乗せてあげるから!」

○○「……うん」

曖昧に頷くと、リオンくんは花畑に手をかざして……

リオン「えいっ!」

○○「!?」

彼の掛け声と共に、その場に大きな綿毛が姿を現した。

(これに乗るの?)

リオンくんが綿毛を手にする。

すると彼の体は風に乗り、空高く舞い上がった。

リオン「じゃあね、また必ず会いに来てね~っ!」

空の上から、緑色の小さな姿が手を振っている。

(すごい……花の精霊の魔法なのかな?)

私は風に乗った姿が陽気な鼻歌と共に遠ざかっていくのを、ずっと見つめ続けていた…-。

 

 

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