花の精の国・ヴィラスティン 陽の月…-。
どこまでも続く黄色い花畑を、そよ風が撫でる。
その柔らかな風に包まれて、かわいらしいタンポポの王子様が目を覚ました。
リオン「ふわぁ・・・…おはよー……ん? 僕、なんでこんなところで……」
○○「……あなたがリオンくん?」
リオン「うん! 君が僕を起こしてくれたの? えへへ、ありがとう……! 今日は風も気持ちいいし、君みたいな子に出会えるし、なんていい日!」
腕を空に突き出して、リオンくんが大きく伸びをする。
よく動く無邪気な瞳と、まき毛の柔らかな金髪が愛らしい。
(まるで空から降りてきた天使みたい……)
その時、大きな風が駆け抜けて、花畑から大量の綿毛が舞い上がった。
○○「……!」
リオン「ふふふ、いい風! ねえ、僕と一緒に風に乗ろうよ♪」
○○「風……?」
リオン「うん、タンポポの綿毛に乗って、どこまでも旅をするんだ。 あ、でもこの風だと、今日は二人はちょっと無理かなぁ?」
風に人差し指を立てて、かわいらしい唇を尖らせる。
リオン「ごめんね。今度、君が僕の国に来た時……その時は、きっと一緒に乗せてあげるから!」
○○「……うん」
曖昧に頷くと、リオンくんは花畑に手をかざして……
リオン「えいっ!」
○○「!?」
彼の掛け声と共に、その場に大きな綿毛が姿を現した。
(これに乗るの?)
リオンくんが綿毛を手にする。
すると彼の体は風に乗り、空高く舞い上がった。
リオン「じゃあね、また必ず会いに来てね~っ!」
空の上から、緑色の小さな姿が手を振っている。
(すごい……花の精霊の魔法なのかな?)
私は風に乗った姿が陽気な鼻歌と共に遠ざかっていくのを、ずっと見つめ続けていた…-。