それから数日後…-。
内通者達が取り押さえられ、城には再び平和が訪れた。
あの日から私は、ユリウスさんと会っていない。
(怪我、大丈夫なのかな)
ユリウスさんの怪我を思い出すと、不安で胸がいっぱいになる。
その時…-。
執事「〇〇様! ユリウス様を、見かけませんでしたか?」
〇〇「え……?」
執事「まだ安静にしなければならないのですが、ベッドを抜け出してしまわれて……」
〇〇「そんな…-」
慌てる執事さんを見ながら、心当たりの場所を思い浮かべる。
(もしかして……)
…
……
中庭の隅を覗くと…-。
(やっぱり……)
剣の素振りをする、ユリウスさんの姿があった。
〇〇「ユリウスさん、怪我の具合は……」
ユリウス「〇〇……」
前はすぐに私に気づいたユリウスさんだったけれど、今日は声をかけるまで気づかなかった。
〇〇「駄目ですよ。まだ執事さんが安静にと」
ユリウス「心配ねーよ。こんなもん、怪我のうちに入らねぇ」
〇〇「でも……」
ユリウス「うるせーな……お前を危ない目に遭わせたのが情けねぇんだよ」
〇〇「え……?」
その時突然、ユリウスさんの体がよろめいた。
(やっぱり、怪我が……!)
私は、ユリウスさんの体をなんとか支える。
その顔色は蒼白で、私は思わず息を呑んだ。
〇〇「戻りましょう。無理しないでください。 お願いですから……」
必死に言い募ると、ユリウスさんが瞳を閉じる。
ユリウス「……ったく、わかったよ」
…
……
ユリウスさんを部屋まで運び、傷の手当てを終わらせた頃には、もう夜の帳が下りていた。
〇〇「もう抜け出したりしないでくださいね」
(こんなに青い顔をして……)
ユリウス「……お前のせいだぞ」
〇〇「えっ……?」
ユリウスさんは、深いため息を吐いた。
ユリウス「オレは戦争からずっと、常に周りを警戒してきた。 誰かに襲われるんじゃないかって、緊張して……夜もろくに寝れなかった」
ユリウスさんはふっと笑った。
ユリウス「なのにお前と会ってから、その緊張が緩んじまったらしい」
(ユリウスさん……)
ユリウス「お前といると……すげぇ安心するんだ」
そう言ってユリウスさんは、私の頬に手を触れる。
(……大きな手)
熱を帯びた彼の手に、私もそっと自分の手を重ねた。
ユリウスさんが静かに瞳を閉じる。
ユリウス「オレは…-」
〇〇「……?」
突然に言葉が途切れ、私は彼の顔を覗き込む。
〇〇「……無理するから」
静かな寝息を立てて、ユリウスさんは眠り込んでいた。
(穏やかな顔……)
(私がいて、ユリウスさんが安らぐことができるなら)
(ずっと、傍にいてあげたい……)
そんなことを思いながら、私は彼の手をぎゅっと握った…-。