第6話 再びの裏切り

それからしばらく、私はユリウスさんとブルメリアで穏やかな時間を過ごした。

そしてある日…-。

私はユリウスさんと城の従者さん達と一緒に、香料の元になる花を集めに、城から少し離れた花畑へと訪れていた。

ユリウス「よかったのか? 付き合わせちまって」

〇〇「はい、いろんなお花が見れて嬉しいです」

ユリウス「そうか」

ユリウスさんは、優しい笑顔を私に向ける。

(……なんだか最近、ユリウスさんの表情が穏やかになった気がする)

辺り一面の花の香りに包まれて、私も嬉しさに胸が弾む。

ユリウス「じゃあお前ら、よろしくな」

その言葉で、従者さん達は花を摘みに方々に散って行った。

ユリウス「さて、オレ達もやるか」

〇〇「私、あっちの方のお花を摘みますね」

ユリウス「いいけど、あんま遠くに行くなよ」

ユリウスさんと離れ、私は誰もいない場所で花を摘むことにした。

(なるべく、たくさんの種類のお花を集めよう)

(また、ユリウスさんといい香りがつくれるといいな……)

その時…-。

後ろを振り返ると、従者さんが一人、静かにたたずんでいた。

〇〇「どうかなさいましたか?」

従者「……」

従者さんは何も言わず、私に近づいてくる。

そして…-。

〇〇「えっ……」

いきなり剣を抜き、それを私に振り降ろしてくる。

〇〇「……!」

間一髪でよけたけれど、足に鈍い痛みが走る。

(嘘……足が……)

足をくじいてしまったらしい。

従者「……」

男は、再び私に剣を振り上げ…-。

〇〇「ユリウスさん……!」

私は、気づくと彼の名前を呼んでいた。

ユリウス「〇〇!」

私の叫びに応えるように、ユリウスさんが横から飛び出し、男と剣を交える。

ユリウス「てめぇ……どういうつもりだ!」

従者「お気づきになるのが遅かったですね。貴方らしくない」

ガキンと剣が鳴り、ユリウスさんが男を弾き飛ばした。

従者「くそ……っ!」

足を負傷した男は、その場にうずくまる。

ユリウスさんが、私をそっと抱き起してくれた。

〇〇「……っ!」

私は、ユリウスさんにぎゅっとしがみついた。

ユリウス「バカ、遠くに行くなっつったろ……もう大丈夫だ」

ユリウスさんは安心させるように、私を抱く力を強くした。

私を守るように背に隠して、ユリウスさんがうずくまっている男をにらみつける。

ユリウス「……お前ら、もしかして。 敵国のスパイか?」

(スパイ……!?)

―――――

ユリウス『最近、なんか妙な感じがするんだ。 誰かに見張られてるような……気のせいだったらいいんだけどな』

―――――

(ユリウスさんが感じていたのは、この人達のことだったんだ……)

スパイの男「戦争には敗れましたが……せめて貴方のお命だけでも、と機会をうかがっておりました。 ですが貴方は警戒心が強くて……この機会を作り出すのに苦労しました」

男はうめくようにそう言って、右手を高く上げた。

すると…-。

ユリウス「……!」

私達の背後から、突然数人の男達が襲いかかってきた。

〇〇「ユリウスさん……っ!」

花をことごとく踏み荒らして、目の前に男達の姿が迫っていた…-。

 

 

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