海から社にかけて、三重の虹が大きく弧を描いている。
そんな中、オレは目の前の〇〇と見つめあっていた。
―――――
陽影『〇〇、オマエこそがオレの運命の人だったんだ!』
〇〇『え……!?』
―――――
(やばいな、つい勢いで運命の人とか言っちまったけど……)
〇〇は驚いたような顔を見せた後、すっかり黙り込んでしまっている。
オレは辺りを支配する沈黙に、心が押しつぶされそうになっていた。
(もしかしてオレ、〇〇のことすげー困らせてるんじゃねーか?)
(で……でも……)
オレは彼女と一緒にいられる最後の一日に、奇跡のように現れた三重の虹に想いを馳せる。
(こんな奇跡を前にして、気持ち、黙ってるなんて……)
(困らせちまうとしても、このまま何も言わずオマエを帰しちまうなんて……)
(そんなこと、オレにはできねー…!)
陽影「オレ……」
そうして、覚悟を決めたオレは沈黙を破った。
陽影「もし、祭のフィナーレにオマエと一緒に花火見られたら……告白しようと思ってたんだ」
〇〇「え……」
うるさく響く胸の鼓動を、なんとか落ち着かせながら言葉を続ける。
陽影「なんかオマエは……特別な気がして、このまま何も伝えずに国に帰しちゃいけない気がしたから。 だけど祭は中止になっちまったし、このまま胸に秘めておこうと思ったけど、やっぱそんなのダメだ! オレはもっとオマエと話がしたい。これからも側にいたいんだ……。 どうか……このまま帰って終わりなんかにしないで、オレと恋人になってくれないか?」
目の前の彼女の顔が、みるみるうちに赤く染まる。
(とうとう言っちまった……)
期待と恐怖でない交ぜになった心を落ち着かせながら、彼女の返事を待つ。
すると、次の瞬間…-。
〇〇「はい……!」
〇〇はオレに、しっかりと頷いてくれた。
(……!!)
一瞬目を疑ったけど、彼女は頬を染めて笑っていて……
(良かっ……た……)
心からの喜びは、そのままオレの言葉になった。
陽影「良かった……これでこれからも〇〇と一緒にいられる。 これで、親父にも、もう妃を考えろとか、うるせーことは言われないだろ!」
〇〇「き、妃!?」
陽影「あっ、すまん!! いきなり妃は唐突過ぎた! そうじゃなくて……その……」
オレの言葉に瞳を瞬かせる彼女に、オレはしどろもどろになる。
陽影「あーーー! オレ、こういうとこがダメなんだよな……」
(つーかこんな肝心な時にやらかすなんて、本当何やってんだよオレ……)
そうしてオレは、がっくりと肩を落としてしまう。
けれども…-。
〇〇「……嬉しいですよ」
彼女はそう言いながら、オレに微笑みかけてくれた。
陽影「〇〇……そっか!良かった!」
(オレ、今まで生きてきた中で一番嬉しい……!)
そうして、オレは…―。
〇〇「あ……!」
体を支配する喜びのままに、彼女をふわりと抱き上げた。
〇〇「ひ、陽影さん!?」
陽影「へへっ……女ってさ、ちっこくてなんか苦手だったけど。 オマエのことは、すげー好きだ!」
〇〇「ありがとう……」
そう言って〇〇はオレの体にぎゅっとしがみついてくる。
そんな仕草に愛おしさが込み上げたオレは、彼女の額にそっとキスを落とした。
(……これからはずっと、一緒だからな)
腕の中の彼女に、そっと誓う。
そんなオレ達の姿を、天に掛かった虹が静かに見下ろしていた…-。
おわり。