第5話 テルテルボウズ

その日以来…―。

陽影さんは祭の最中に顔を合わせると、人々に囲まれていても応えてくれるようになった。

時には手を振り、仲間と共に話に混ぜてくれたり、二人で祭を回ってくれたりする。

(陽影さんといると、すごく明るい気持ちになれる)

(祭の最終日もいよいよ明後日だし、楽しみ……)

だけどその翌日…―。

蓬莱は数年に一度という嵐に襲われてしまった。

朝から降り続けた雨は正午になり、雷雨となり激しさを更に増していた。

陽影「雨、止まねーな……これじゃあ今年は祭のフィナーレは中止か……」

私達は城の窓から、横殴りの雨を眺めては、ため息を吐く。

(せっかく最終日は一緒に回ろうって約束してくれたのに……)

蓬莱の国の人々は、これまでも嵐の度に多くの命を失くしているらしい。

昼過ぎには嵐を恐れ敬い、祈祷師により祈りが捧げられた。

それでも、雨の勢いは増すばかりで…―。

陽影「……」

城の人々も、陽影さんもすっかり意気消沈してしまっている。

私は……

〇〇「雨、止みませんね……」

陽影「ああ……せっかくオマエが来てくれてるってのに、タイミング悪いよな」

依然、表情の晴れない様子に、私は自分にも何かできないかと考えて……

(そうだ……)

〇〇「てるてる坊主、作りましょうか」

陽影「……何それ? トロイメアに伝わる祈祷か何か?」

〇〇「ええと……ちょっと違うんですが、白い布を使って作った人形を窓辺に吊るして、雨が止むようにお願いするんです」

私は陽影さんに頼んで道具を用意してもらうと、彼の前でひとつ実際に作ってみせる。

陽影「へえ……ウマイもんだな」

それから、見よう見まねで陽影さんも同じようにてるてる坊主を作る。

彼が作り上げたのは形は歪んでいたけれど、陽影さんの明るさを反映してか、愉快な表情をしている気がした。

陽影「雨は残念だけど、こういうのは悪くねーなっ!」

窓辺に吊るしては、お互いを見やり微笑む。

〇〇「後は……本当に晴れてくれれば、言うことないんですが」

そっと二人で雷鳴の轟く空を眺める。

陽影「……きっと止むさ! こんなにいっぱい、オマエとテルテルボウズを作ったんだから!」

ニッと笑って、彼は元気づけるように私の肩をポンと叩いた。

その笑顔を見ていると、心がなんだかくすぐったくなった。

そして…―。

(雨が止んでも止まなくても、祭が終われば、私は帰らなきゃいけないんだよね……)

そう思うと、途端に胸がぎゅっと締めつけられる。

外は相変わらず、勢いを弱めることなく、土砂降りの雨が続いていた…―。

 

 

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