晴天の空はいつしか雲に覆われ、降り注いでいた太陽の光も薄らいでいる。
その空を仰ぎ見ながら、陽影さんが、彼にしては小さな声で話し出した。
陽影「オレ、さ…―。小さな頃から思い込むとそれ一直線で周りが見えなくなるんだ。 だからいい奴だなって思うと、力になってやりたくなって……だけどオレはこの通りの人間だし。 嘘とかお世辞とか上手く言えねーから、良かれと思って、結局いつも傷つけちまう……」
〇〇「女の子を、ですか……?」
陽影「いや、女に限らず、つるんでくれる連中も子どもも……多分親父に素直になれねーのも同じだな」
決まりが悪そうに頭を掻きながら、陽影さんは話を続ける。
陽影「女はちょっと苦手だけど。小さくて細くて繊細そうだし……なんかやわっこいだろ。 だから、オレみたいのが本気で恋とかしたら、相手のこと壊しそうで……怖いんだよ」
(そんなこと思ってたんだ……)
意外な一面に、私の胸がきゅっとする。
私は……
〇〇「そんなことないと思いますけど」
陽影「なんで?」
〇〇「街の皆さんは、陽影さんのことが好きみたいでしたから」
陽影さんは片目を歪めて、喉を鳴らす。
〇〇「……?」
(私、何か笑われるようなこと、言ったかな?)
陽影「っ、なんなのオマエ。でも……そうだな、きっといい奴なんだなってことは、わかった。 な、改めてよろしくな、〇〇」
(あ……)
陽影さんはすっと、日に焼けた小麦色の腕を差し出す。
〇〇「よろしくお願いします」
嬉しさに、にっこりと笑って彼の逞しい手を取る。
陽影「ああ!」
〇〇「……っ」
ぐっと力をこめて腕を引き寄せられて、肩を組まれる。
カッと熱を帯びた頬で、彼を見上げると……
(いつもの笑顔が戻ってる)
いつの間にか天に差した雲は消えて、真夏の太陽が陽影さんを照らしている。
陽影「また今度、祭一緒に回ろうな。特に最終日のフィナーレの花火は最高にキレーだから。 それに……」
〇〇「……?」
陽影「やっぱいいや、なんでもない」
陽影さんは私と目が合うと、誤魔化すように白い歯を見せて笑った。
再び顔を見せた太陽の光によって、辺りはいっそう明るく照らされていた…―。