四季の国蓬莱・虹の月…―。
街はどこもかしこも祭に踊り狂う人々であふれ、和太鼓と笛の音が騒がしいほどだった。
街全体が活気付いている様子に、辺りをぐるりと見渡すと……
陽影「おーい、よく来たなぁっ!」
鳴り物を打ち鳴らし踊りを楽しむ人々の輪から、見覚えのある姿が駆け寄ってくる。
〇〇「陽影さん!」
(四季の国の王子様……真夏の太陽のような明るさと熱を持った人)
私がこの国にやってきたのは、先日目覚めさせたこの人から、国一番の祭へ誘われたからだった。
〇〇「陽影さん、今回は誘っていただいてありがとうございます」
陽影「あー……そういう堅っ苦しいのはいらねーよ。そんなことよりすごい賑わいだろっ!?」
〇〇「ええ、みなさん、とても楽しそうで」
陽影さんは太陽の下、よく鍛えられた体に汗を光らせて、声を上げて笑う。
陽影「オレが目覚めたからって、例年以上の盛り上がりだからな」
踊り手の青年1「当たり前っすよ、陽影さん!」
踊り手の青年2「こんな時に祭を楽しまないでいつ楽しむっていうんだよ、こんなかわいい子まで呼んでさ!」
〇〇「え……」
青年が口にした言葉に目を丸くしていると……
陽影「ばか野郎が、困らせてんじゃねーぞ、てめーら」
踊り手の青年2「ははっ、すんませんっ、陽影さん!」
陽影「さ、コイツらの言うことは気にしないで、オマエも楽しんでけよ」
〇〇「はいっ……え!?」
強引に手を引かれ、右も左もわからないまま踊りの輪に加わる。
だけど、この国の人々は皆おおらかで……
私は隔たりのない笑顔に包まれ、いつになく羽目を外して祭を楽しんだ。
そして……
〇〇「きれいですね……」
陽影「ああ、初日のクライマックスに相応しい派手さだ」
会場の中心で焚かれる巨大な篝火が、人々の顔をオレンジ色に照らす。
陽影「けど祭はまだ始まったばかりだ、オマエも心の底から楽しんでけよ。 祭りはこれから、10日間も続くんだからな!」
彼の太陽のような笑顔に、私はすっかりこの先が楽しみになり、自然と頷いていた…―。