第5話 クローディアスのお願い

翌日の夕方…-。

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執事『レイヴン様でしたら、熱も下がりお庭で風に当たっていらっしゃいますよ』

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執事さんからそう伺って、私は庭へとやってきていた。

(レイヴンさんの様子が気になる……)

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レイヴン『オフィーリアは身体が弱かったのに……雨の降る中、一日中私に付き合ってくれた。 その夜……熱を出して死んだんだ。 私が殺したも同然だ』

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花の生け垣に向かい、一人佇むレイヴンさんを見つけた。

〇〇「レイヴさ…-」

レイヴン「オフィーリア……もう少しだ」

夕焼けに消え入りそうな声が聞こえ、私は唇を閉ざす。

レイヴン「クロードが7歳になったら……」

(どういうこと……?)

唇に手を当てて、動くことができずにいると……

??「こっち……」

手を突然に引かれた。

〇〇「クローディアス君……」

小さな手に引かれ、私達は物陰のベンチへとやってくる。

クローディアス「あのね……来年、ぼくは7歳になって王位継承権を認められるようになるの。 そうしたら、お兄さまはオフィーリアお姉さまのところにいくつもりなの」

〇〇「え……?」

クローディアス「オフィーリアお姉さまは、お兄さまの婚約者だよ……死んじゃったけど。 ぼく、聞いたの……お兄さまがオフィーリアお姉さまのお墓の前で言ってたんだ。 ぼくが皇太子になれたら、王座が空くしんぱいもないから……って」

クローディアス君は、小さな手をぎゅっと握りしめている。

私は思わずその手を包み込んだ。

クローディアス「ぼく、大きくなりたくない……でもどんどん大きくなっちゃう。 たすけて……〇〇さま」

大粒の涙を流し、大声で泣きはじめたクローディアス君をぎゅっと抱きしめる。

その時…-。

レイヴン「どうしたんだ、クロード」

泣き声に気付いたのか、レイヴンさんがやってくる。

彼は、泣いているクローディアス君を軽々と抱き上げて、優しくその頬の涙をぬぐってあげた。

レイヴン「何があった? 転んだのか?」

小さな弟を見つめる眼差しは、本当に優しくて……

それが、私の胸をますます切なく締めつける。

レイヴン「〇〇様、弟の面倒を見ていてくださったのですか?」

〇〇「いえ……」

私が首を振ると、彼は優しく目を細めた。

レイヴン「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」

そのままクローディアス君を抱いて、レイヴンさんが立ち去っていく。

彼の肩越しに、クローディアス君のうるんだ瞳が、すがるように私を見つめていた。

(……二人の力になりたい)

(でも……私に、何ができるんだろう)

それでも私は、遠ざかっていくクローディアス君に力強く頷いて見せた……

 

 

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