夕凪の国レベルタ、星の月…-。
野に咲く花々に星々のきらめきが降り注いでいる…-。
国王陛下に招かれ、私は夕凪の国・レベルタを訪れていた。
(星空のパーティーなんて、すごく素敵)
満天の星空の下、美しくしつらえられたテーブルでたくさんの人が談笑している。
レイヴンさんの正面の席で、私はグラスに注がれていく星屑色の液体を見つめていた。
〇〇「これは……?」
レイヴン「満月の夜に摘んだ花の蜜から作られたお酒です」
キラキラと輝くグラスの中を覗き込むと、スミレのように甘やかな香りが広がる。
〇〇「とってもいい香りですね」
ふっと微笑んだ私に、レイヴンさんの右隣の席の男の子が笑いかけてくれた。
(かわいい……5歳くらいかな?)
レイヴン「弟のクローディアスです。クロード、姫にご挨拶は?」
クローディアス「こ……こんばんは」
〇〇「こんばんは」
真っ赤に頬を染めた弟さんを、レイヴンさんが愛おしそうに見つめた。
(すごくかわいがってらっしゃるんだな)
クローディアス君は、ふとレイヴンさんの左隣の席に目をむける。
(そういえば……)
満席のテーブルの中、その席だけが空いていた。
(あそこにはどなたが座るんだろう?)
レイヴンさんは、その席に置かれたグラスに静かに蜜酒を注ぐ。
やがて白く美しい花を懐から取り出し、そっとグラスの前に添えた。
レイヴン「オフィーリア……君の好きな花が咲いたよ」
消え入りそうなほど小さなその囁きは、なぜだか私の胸を締めつける。
誰もいない席に笑いかける彼の横顔が、星空に消え入ってしまいそうに見えた…-。