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マーチア『ならさ、君が一緒にオレとアリスのこと調べてよ! ね!?』
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私はマーチアさんと『アリス』を調べることになった…―。
マーチブローの街は、派手な看板で装飾された建物が折り重なる、華やかで都会的な場所だった。
マーチアさんは、アリスに関連があるからと、私をいろんな場所へ案内してくれる。
マーチア「マーチブローにはなんだってあるんだよ。おいしいお菓子に世界中の紅茶。お楽しみは盛りだくさん。 ねえ、次はどんなことして遊びたい?」
(さっきから遊んでばかりだけど、いいのかな)
すっかり娯楽に夢中になっているマーチアさんに…―。
〇〇「アリスのことはいいんですか?」
そう尋ねると、マーチアさんは指で髪を弄びながら、悪戯っぽく笑ってみせた。
マーチア「そうそう、アリスだった。じゃあ彼女が飲んだ紅茶を調べに行こっか!」
〇〇「あ、待って!」
ぐいと私の手を引き、マーチアさんが走り出す。
マーチア「ほらほら、早く~! あ、お店、発見!」
マーチアさんに連れられてきたのは、オシャレな外観の紅茶専門店だった。
マーチア「ん~~、いい香り! 特にこのバラの香りのやつなんて、オレにぴったりだと思わない?」
マーチアさんは、楽しげにカップの取っ手を指で撫でている。
〇〇「アリスのことは、いいんですか?」
マーチア「ああ、これきっとじじいがアリスに淹れた紅茶だよ、間違いない」
〇〇「……本当に?」
マーチア「ほんとほんと、ほら、この香り、確かめてみてよ」
マーチアさんが手にした小瓶の蓋を開くと、華やかな香りが辺りに広がった。
〇〇「あ、確かに女の子が好みそうな、いい香り……」
マーチア「君はさ、アリスがどんなヤツだったかって知ってるの?」
私は、昔読んだ童話を思い出しながら、マーチアさんにアリスのことを話し始める。
マーチアさんは初めは興味深そうに聞いていたけれど……
マーチア「ふわ~あ……」
大きなあくびで、私の話を遮った。
マーチア「もういいや。やっぱり、いなくなったヤツのこと気にするなんて馬鹿らしいや」
〇〇「マーチアさ…―」
マーチア「……ねえ、そろそろ話は終わりにしない? それよりもオレもっと君と楽しいことしたいな」
不意に、私の頬が彼の指先でなぞられた。
マーチアさんはそのまま、顔を私の耳元に近付けてきて…―。
マーチア「だって、ココ。むせ返るみたいな甘い香りで……オレちょっとドキドキしてきちゃったし」
〇〇「え……!?」
耳元に近づいたマーチアさんの吐息から、さきほどのバラの香りが漂う。
くすぐったさとその甘やかな香りに、胸が音を立て始めた。
マーチア「ね、〇〇ちゃん。オレ、君のそのピンクのほっぺ、味見してみたいな……」
その言葉とほぼ同時に、小さな舌がぺろりと私の頬を舐めた。
〇〇「……っ!!」
マーチア「あははは! 何その顔、ほんの冗談だってば」
マーチアさんの態度に、私は……
〇〇「ふ、ふざけないでください……! アリスのことを調べようって言ったのは、マーチアさんなのに」
マーチア「えー……」
見る間に彼の表情は曇りはじめ、楽しそうにふわふわと動いていた耳が完全に垂れ下がる。
マーチア「……君ってほんと。会話の弾まないお茶会くらいつまんない。 そんなんじゃ、いつまでたっても恋人の一人もできないよ?」
顔を赤くする私を見て、口元を隠したマーチアさんは、意地悪く笑った…―。