不思議の国・ワンダーメア マーチブロー…―。
深い森の奥で、一人の王子を目覚めさせたのは今からちょうど一週間前。
私はその時に目覚めさせた王子、マーチアさんに招待され、マーチブローの城を訪れていた。
(確か、招待状には中庭にいるって書いてあったよね)
中庭へ足を運ぶと、真っ白なテーブルチェアの上に、様々なお菓子や紅茶が用意されていた。
マーチア「やあやあ、遠いところからよく来てくれたね! ささ、この椅子に座って」
長く垂れた耳を手で弄びながら、マーチアさんが元気よく私を迎えてくれた。
〇〇「えっと……」
マーチア「遠慮することなんてないでしょう? 今日は君との再会を楽しむお茶会なんだから。 いつもつるんでる悪友達から、君がトロイメアのお姫様だって聞いて楽しみにしてたんだよ」
八重歯を見せて、マーチアさんは手にしたカップに紅茶を注ぐ。
〇〇「ありがとうござ…―っ!?」
突然…―。
手渡されたカップから小鳥が飛び立ち、私は驚いて肩を揺らした。
マーチア「へへ、驚いた? ねえ、今の驚いた!?」
にんまりと笑い、別のカップに新たに紅茶を注ぎ始める。
(びっくりした……手品か何かだったのかな)
(この人が、三月ウサギたちの集落をまとめる、この国の王子?)
マーチア「いやぁ、あのトロイメアのお姫様が第二のアリスだなんてビックリだよね。うん、ほんとビックリ」
〇〇「……私が、アリス?」
マーチア「そうそう、昔このワンダーメアに表れたって言う、言い伝えの少女……って何その顔。 あれ? もしかして……違うの!?」
〇〇「私はアリスではなく、〇〇ですが……」
マーチア「……!?」
その瞬間、マーチアさんは口をあんぐりと開き、手にしていたポットを地面に落とした…―。