ついに迎えた、愛の日の朝…―。
ジョシュア「さて……それじゃあ、どの店から回ろうかな」
○○への贈り物を選ぶために街へとやってきたオレは、大通りに立ち並ぶ店のショーウィンドウを眺めながら歩みを進める。
(あっ。このネックレスは中々いいな)
(だけど、彼女には少し派手かもしれない……)
(それなら、あっちのバッグは……いや、あれも違うな)
ああでもない、こうでもないと考えを巡らせながら、街の中を歩いていく。
その時だった。
ジョシュア「……ん? これは……」
オレはブティックのショーウィンドウの前で足を止める。
そこには、深い紅茶色のドレスが飾られていた。
(……うん。シンプルだけど、品があって……)
(何より、彼女の肌の色にとてもよく合いそうだ)
ドレスに目を奪われたオレは、早速ブティックへと足を踏み入れる。
店員「いらっしゃいませ」
ジョシュア「すまない。そこのショーウィンドウに飾られているドレスだけど……。 プレゼント用に包んで、預かっておいてもらいたいんだ」
店員「こちらでございますね。かしこまりました。 お受け取りは何時ごろになりますでしょうか?」
ジョシュア「そうだね。夕方ぐらいかな。 ……大切な女性と一緒に来る予定だから、失礼のないように頼むよ」
若干の気恥ずかしさを覚えながらそう言うと、店員は笑みを浮かべた。
店員「承知いたしました。それでは、お待ちしております」
ジョシュア「ああ。ありがとう」
オレは支払いを済ませた後、店員に軽く手を上げて店を後にする。
ジョシュア「ふう……なんとか無事に選べてよかった。 ……っと、いけない。急がないと待ち合わせの時間に遅れてしまうな」
(○○、喜んでくれるといいけど……)
(どうか、君の笑顔が見られますように)
少しの不安と期待を胸に、オレは城へと続く道を急いだ…―。
…
……
それから、しばらく…―。
ジョシュア「開けてごらん」
街でデートを楽しんだ後、オレは部屋で○○にドレスの入ったショップバックを渡した。
しかし……
(……あれ? どうしたんだ?)
ドレスを手にした彼女は、最初こそ喜びの表情を浮かべていたものの、その表情はみるみるうちに曇っていく。
ジョシュア「○○?」
(もしかして、ドレスに何か不備でもあったのか……?)
言いようのない不安を覚えながら○○の様子をうかがう。
すると、彼女は気まずそうに口を開き……
○○「昨日も、今日も……ジョシュアさんと一緒に過ごせて、とても楽しくて。 素敵な贈り物までいただいて……なのにすみません。私は、ジョシュアさんに何も…―」
(え……?)
(……馬鹿だな。そんなことを気にしていたのか)
(まったく……オレのこと、もう少しわかってくれてると思っていたんだけどな)
安堵と愛おしさがない交ぜになったような気持ちを抱きながら、オレは彼女を見つめる。
ジョシュア「○○、おいで」
オレは彼女の手からドレスを受け取り、大きな姿見の前へと誘った。
ジョシュア「思ったとおりだ。このドレスは、君の肌の色によく映える」
彼女の体に、そっとドレスをあてがう。
○○「ジョシュアさん……?」
ジョシュア「オレへの贈り物なんて、選ばなくていいんだよ」
(選ぶ必要なんてないんだ。だって……)
ジョシュア「オレが欲しい物は、君の笑顔なんだから」
○○「笑顔……?」
ジョシュア「そう。ほら、レディはいつも笑っていないと……ね?」
○○「はい……」
彼女は、ぎこちないながらも笑顔を向けてくれる。
ジョシュア「……いい子だね。 オレが君を、世界で一番のレディにしてあげる」
○○「世界一の……?」
ジョシュア「そうだよ。自信がないなんて言わせない」
(君はいつかきっと……いや、間違いなく世界一のレディになれる)
(だって……)
(君は、出会った時よりもずっと素敵になっているから)
鏡の中の彼女は、さっきまでのぎこちない笑顔が嘘のようにオレへと笑いかけてくれる。
そして……
○○「ジョシュアさんの隣に立てるような、立派なレディになりますから」
(オレの……?)
(そうか……まさか、君からそんな言葉が聞けるなんて)
自分でも驚くほどの喜びが沸き上がり、それを噛みしめながら言葉を紡ぐ。
ジョシュア「その言葉が、何よりも贈り物だよ。 そして、いつか……オレのためだけに、世界一の笑顔を見せて……?」
オレは彼女の背中を包み込むように抱き寄せる。
愛おしさを込めながら重ねた唇は、チョコレートよりも甘かった…―。
おわり。