柔らかな陽光がさす中庭で、ジョシュアさんの広い背中を見つけた。
◯◯「ジョシュアさん」
呼びかけると、ジョシュアさんが振り返る。
ジョシュア「◯◯」
私の姿を認めるなり、その瞳が柔らかく細められた。
◯◯「お待たせしてしまいましたか?」
待ち合わせた庭園に、ジョシュアさんは時間よりも早く着いていた。
ジョシュア「レディを待たせるわけにいかないからね」
そう言って、ジョシュアさんは私の背に軽く手を添える。
ジョシュア「今日は一日、君のエスコートを務めるよ」
◯◯「はい、よろしくお願いします」
ジョシュアさんは私に歩幅を合わせ、ゆっくりと歩き出す。
ジョシュア「すべて、姫の仰せのままに」
彼のたおやかな横顔を見つめながら……
その優雅な振る舞いに、憧れにも似たときめきを感じていた…ー。
…
……
ジョシュアさんが最初に連れて来てくれたのは、街角のレストランだった。
ジョシュア「この店、ショコルーナの王子が教えてくれたんだ」
◯◯「そうなんですね。人気があるのも頷けます」
ランチのコースメニューは、見た目も美しく、繊細な味つけが施されていた。
◯◯「やっぱり、デザートはショコラでしたね」
ジョシュア「昨日からチョコレート尽くしだけど、飽きてはいない?」
私に向かって、ジョシュアさんが悪戯な笑みをこぼす。
◯◯「チョコレートは好きなので、大丈夫ですよ」
ジョシュア「それはいいけど、食べ過ぎには注意してね? レディたるもの…ー」
◯◯「そ、それ以上は言わなくていいです…… ! 」
クスリと優雅な笑みをこぼすジョシュアさんに、顔が熱くなる。
◯◯「チョコレートは好きですけど……この街でこうして過ごしているだけでも、とても楽しいです」
すると、何故かジョシュアさんが不満げに口を開いた。
ジョシュア「君が他国を褒めるのは……やっぱり気に入らない」
(え…… ? )
ジョシュア「このままじゃ面白くないから。 ◯◯が、そんなにも嬉しそうに笑うのは……。 オレと一緒だからだって、思っていい?」
(ジョシュアさん……)
◯◯「はい……」
照れ混じりに頷くと、ジョシュアさんの瞳がふっと和らいだ。
…
……
ランチの後は、ジョシュアさんがショッピングに誘ってくれた。
ジョシュア「◯◯、君に似合そうなアクセサリーがあるよ」
見ると、オープンハートで可愛らしいデザインのネックレスだった。
◯◯「これも愛の日向けの商品でしょうか?」
ジョシュア「限定品みたいだ。さすが、いろいろと工夫してるね」
愛の日にちなんだ品物を見ているだけで、わくわくと胸が高鳴る。
(おいしいランチの後に、楽しいショッピング……)
ジョシュアさんのエスコートは完璧で、絵に描いたような優雅なデートに、幸せな気持ちは膨らむばかりだった。
(よくしてもらってばかりだけど……私もジョシュアさんに贈り物をしなきゃ)
ジョシュア「◯◯、少し向こうの棚を見てくるよ」
◯◯「わかりました」
ジョシュアさんが席を外した時、素敵なティーセットを見つけた。
(綺麗……)
透き通るような白磁に施された、繊細なレリーフに見惚れてしまう。
(これなら、ジョシュアさんも気にってくれるかな?)
ジョシュア「お待たせ。◯◯、そろそろ行こうか?」
◯◯「えっ? あの……」
ジョシュア「君に渡したいものがあるんだ」
(渡したいもの……? それって…ー)
結局ティーセットを買う前に、ジョシュアさんは私の手を引いて店を後にした…一。