月7話 紳士淑女の休日

柔らかな陽光がさす中庭で、ジョシュアさんの広い背中を見つけた。

◯◯「ジョシュアさん」

呼びかけると、ジョシュアさんが振り返る。

ジョシュア「◯◯」

私の姿を認めるなり、その瞳が柔らかく細められた。

◯◯「お待たせしてしまいましたか?」

待ち合わせた庭園に、ジョシュアさんは時間よりも早く着いていた。

ジョシュア「レディを待たせるわけにいかないからね」

そう言って、ジョシュアさんは私の背に軽く手を添える。

ジョシュア「今日は一日、君のエスコートを務めるよ」

◯◯「はい、よろしくお願いします」

ジョシュアさんは私に歩幅を合わせ、ゆっくりと歩き出す。

ジョシュア「すべて、姫の仰せのままに」

彼のたおやかな横顔を見つめながら……

その優雅な振る舞いに、憧れにも似たときめきを感じていた…ー。

……

ジョシュアさんが最初に連れて来てくれたのは、街角のレストランだった。

ジョシュア「この店、ショコルーナの王子が教えてくれたんだ」

◯◯「そうなんですね。人気があるのも頷けます」

ランチのコースメニューは、見た目も美しく、繊細な味つけが施されていた。

◯◯「やっぱり、デザートはショコラでしたね」

ジョシュア「昨日からチョコレート尽くしだけど、飽きてはいない?」

私に向かって、ジョシュアさんが悪戯な笑みをこぼす。

◯◯「チョコレートは好きなので、大丈夫ですよ」

ジョシュア「それはいいけど、食べ過ぎには注意してね? レディたるもの…ー」

◯◯「そ、それ以上は言わなくていいです…… ! 」

クスリと優雅な笑みをこぼすジョシュアさんに、顔が熱くなる。

◯◯「チョコレートは好きですけど……この街でこうして過ごしているだけでも、とても楽しいです」

すると、何故かジョシュアさんが不満げに口を開いた。

ジョシュア「君が他国を褒めるのは……やっぱり気に入らない」

(え…… ? )

ジョシュア「このままじゃ面白くないから。 ◯◯が、そんなにも嬉しそうに笑うのは……。 オレと一緒だからだって、思っていい?」

(ジョシュアさん……)

◯◯「はい……」

照れ混じりに頷くと、ジョシュアさんの瞳がふっと和らいだ。

……

ランチの後は、ジョシュアさんがショッピングに誘ってくれた。

ジョシュア「◯◯、君に似合そうなアクセサリーがあるよ」

見ると、オープンハートで可愛らしいデザインのネックレスだった。

◯◯「これも愛の日向けの商品でしょうか?」

ジョシュア「限定品みたいだ。さすが、いろいろと工夫してるね」

愛の日にちなんだ品物を見ているだけで、わくわくと胸が高鳴る。

(おいしいランチの後に、楽しいショッピング……)

ジョシュアさんのエスコートは完璧で、絵に描いたような優雅なデートに、幸せな気持ちは膨らむばかりだった。

(よくしてもらってばかりだけど……私もジョシュアさんに贈り物をしなきゃ)

ジョシュア「◯◯、少し向こうの棚を見てくるよ」

◯◯「わかりました」

ジョシュアさんが席を外した時、素敵なティーセットを見つけた。

(綺麗……)

透き通るような白磁に施された、繊細なレリーフに見惚れてしまう。

(これなら、ジョシュアさんも気にってくれるかな?)

ジョシュア「お待たせ。◯◯、そろそろ行こうか?」

◯◯「えっ? あの……」

ジョシュア「君に渡したいものがあるんだ」

(渡したいもの……? それって…ー)

結局ティーセットを買う前に、ジョシュアさんは私の手を引いて店を後にした…一。

 

 

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