ジョシュア「明日は、俺がずっと一緒にいるから。 覚悟しておいてね?」
帰りが遅くなった私を、ジョシュアさんはずっと待ってくれていた。
厳しくも温かな眼差しに、また心が解かれる…ー。
ジョシュア「? その紙袋……」
その時、ジョシュアさんが私の手元をじっと見つめた。
(あっ!)
ジョシュア「…… なるほどね」
(見つかっちゃった……)
二つになったショップバックを見て、ジョシュアさんは私の行動を悟ったようだった。
(なんだか、気恥ずかしい……)
ジョシュアさんは柔らかく目を細め、そっと私の頬に触れた。
ジョシュア「少し、頬が赤くなってる。 走って帰ってきたせいかな? それとも、さっきの…ー」
親指の腹で、優しく頬を撫でられ……
○○「……っ」
どうしていいかわからず、ぎゅっとまぶたを閉じる。
すると、ジョシュアさんが私の耳元に唇を寄せた。
ジョシュア「少し、夜風に当たろうか ー」
…
……
夜の庭園は人影もなく、ひっそりと静まり返っていた。
私はすこし緊張しながら、ジョシュアさんの隣を歩いて行く。
ジョシュア「本当に、君の行動はわかりやすいというか……」
先に沈黙を破ったのは、呆れ半分のジョシュアさんの声だった。
○○「そ、そうですか……?」
ジョシュア「でも時々……妙にドキッとさせられる。 ……今夜もそうだった」
(それって……)
ジョシュア「そんな可愛い顔をして…… 期待するなっていう方が無理だよ」
ジョシュアさんは、どこか照れくさそうに視線を逸らす。
ジョシュア「……で? オレは君からチョコレートをもらえるのかな」
○○「!」
(全部見透かされているようで、恥ずかしいけど……)
ジョシュアさんに聞かれ、私は素直に頷く。
すると、ジョシュアさんが確かめるように言葉を続けた。
ジョシュア「愛の日の意味は、ちゃんと教えたよね?」
○○「はい……。 ほんの少しの勇気を持って…… 大切な人に想いを伝える日、ですよね」
ジョシュア「うん…… そうだね」
(ジョシュアさんへ、大切な想いを込めて……)
チョコレートに勇気をもらい、ジョシュアさんの瞳を見つめ返す。
そして…ー。
○○「ジョシュアさんが、好きです……」
小さく声を震わせながら、精いっぱい想いを告げる。
○○「愛の日に、これを渡そうと思って……」
手にしていた紙袋を、ジョシュアさんに差し出した。
ジョシュア「……今、開けてみていいかい?」
○○「はい……」
ジョシュアさんは黙ってそれを受け取ると、丁寧に包みを開いた。
ジョシュア「これは……」
○○「ジョシュアさんの思い出のチョコレートと……。 もう一つは、同じシリーズの新作だそうです」
ジョシュア「……センスのいいチョイスだね」
ジョシュアさんの指が、そっと私の顎先を捕える。
(あっ……)
唇が触れそうなほど近くで、瞳を覗き込まれた。
ジョシュア「ちゃんと、オレの大好きな紅茶と合うチョコレートを選んである」
ジョシュアさんの吐息が唇にかかるたび、胸が甘く震えた。
○○「選ぶのに、時間がかかってしまって……」
照れ隠しに、そう告げると…ー。
一瞬、ジョシュアさんの唇がついばむように重なった。
○○「っ……!」
それだけで、胸の鼓動は痛いほど脈を速まっていく。
ジョシュア「このラッピングも、チョコレートも、全部オレ好みだ。 あとは…… 今夜、ずっと君が傍にいてくれれば」
ジョシュアさんの優しい腕に、体を包み込まれる。
ジョシュア「……全てが完璧だよ」
ジョシュアさんは私のうなじを引き寄せ、自分の胸元へ抱き寄せた。
(ジョシュアさん……)
彼の胸に頬を寄せれば、柔らかな鼓動が伝わってくる…ー。
ゆっくりと顔を上げると、ジョシュアさんと目が合った。
その口元に誘うような甘い笑みが浮かんでいる。
ジョシュア「ありがとう、○○……」
まるで引き寄せられるやうに、二人の唇が重なって……
ジョシュアさんへの溢れる想いも、甘い胸のときめきも……
熱を帯びたジョシュアさんの唇に、全て溶かされていった…ー。
おわり。