ジョシュアさんと別れた後、もう一度老舗のショコラショップを訪れた。
扉を開いた途端、甘やかなチョコレートの世界に招かれる。
(ジョシュアさんの思い出が詰まった、特別なショコラティエ……)
このショコルーナの街には、素敵なチョコレートの店が軒を連ねているけれど……
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ジョシュア「やっぱり、この店の味が一番気に入ってる」
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あの時のジョシュアさんの優しい顔が、何度も思い起こされる。
(明日の愛の日には、ジョシュアさんにこのお店のチョコレートを渡したい)
強くそう思い、私はショーケースを眺め始めた。
ジョシュアさんの好みに合いそうなものを探し、熱心にショーケースを眺めていると…ー。
店主「お客様。愛の日の贈り物ですか?」
○○「え?あ、はい…… そうなんです」
改めて言葉にすると、頬に熱が集まるのがわかった。
店主「お悩みでしたら、こちらはいかがでしょう?」
店主は穏やかに微笑むと、ショーケースからチョコレートを一粒差し出してくれる。
(わあ、綺麗なチョコレート)
店主「先ほど、お客様がご覧になられていたシリーズの新作になります」
懐かしさを感じるような、温かみあるシルエットはそのままに、華やかな金箔や、ドライフルーツで煌びやかにアレンジされていた。
(ジョシュアさんの思い出のチョコレートの……)
○○「それじゃ、これを一つと……」
甘酸っぱい気持ちになりながら、私はそのチョコレートを手に取った…ー。
…
……
店を出た頃には、すっかり日が落ちてしまっていた。
昼間の喧騒は嘘のように静まり、通りを行く人影もまばらだった。
(もうこんな時間…… 早く帰らなきゃ)
見慣れぬ街で一人、取り残されるような気持ちになる。
(今日はずっと、隣にジョシュアさんがいてくれたからだ……)
彼の存在を、改めて大切にしながら、私はチョコレートの入った紙袋を手に、城へと急いだ。
日が暮れた後、急いで宿泊先の城へと戻ると…ー
(あっ……)
ジョシュア「……」
壁にもたれながら、ジョシュアさんが私に視線を流した。
ジョシュア「こんな時間まで、どこへ行ってたの?」
にわかに怒りを含んだ瞳が、すっと細められる。
(心配して、ずっと待っていてくれたんだ……)
○○「ごめんなさい……」
しゅんと肩を落とし、ジョシュアさんに頭を下げると……
ジョシュア「まったく、姫としての自覚がなさ過ぎるよ。何かあったらどうするんだ」
○○「……」
何も言い返せず、頭を上げることができない。
すると…ー。
ジョシュア「本当に心配した」
(え……?)
顎を掴まれたかと思うと、そのままぐいと引き上げられた。
○○「ジョシュアさん……?」
吐息がかかるくらい近い距離にジョシュアさんの顔があり、胸が早鐘を打ち始める。
ジョシュア「いけない子には…… お仕置きが必要だね」
ジョシュアさんはクスリと、妖艶な笑みを浮かべる。
(お仕置き!?)
○○「あ、あの…ー」
慌てて顔を離そうとすると、ふわりと額にキスが落とされた。
ジョシュア「明日は俺がずっと一緒にいるから。 覚悟しておいてね?」
(ジョシュアさん……)
意地悪な口調なのに、彼の瞳はすごく優しく細められていて……
その目に見つめられると、私は身動きすらできなかった……。