第4話 老舗のショコラ

ショコルーナの紅茶専門店で、ゆったりとしたティータイムを楽しんだ後…ー。

○○「紅茶のお店でも、愛の日向けの商品が出ていましたね」

ジョシュア「○○は、紅茶のトリュフが気に入ったみたいだったけど?」

○○「一口頬張ると、ほのかに紅茶の香りがして…… とてもおいしかったです」

甘やかな舌触りを思い返せば、それだけで幸せな気持ちになれた。

そんな私を見つめ、ジョシュアさんが瞳に優しい色をにじませる。

ジョシュア「じゃあもう一軒、付き合ってくれる?」

……

○○「わあ、素敵なお店……」

ジョシュアさんが連れて来てくれたのは、老舗のショコラショップだった。

店内は品のいい装飾が施されており、さまざまなチョコレートがケースに綺麗に並べられている。

○○「ジョシュアさん、どうしてこのお店へ?」

ジョシュア「ああ、まだ話してなかったね。 子どもの頃、外遊に出かけた父が、よくお土産に買ってきてくれたんだ」

○○「お父様が?」

ジョシュア「ああ、幼いオレにとっては、厳しい父だったけどね…… この時ばかりは、帰りを待ちわびて。 やっぱり、この店の味が一番気に入ってる」

ジョシュアさんの瞳が、優しく細められる。

(こんなジョシュアさんの顔…… 初めて見たかも)

店内を見渡すジョシュアさんの横顔は、なんだかあどけなくて……

○○「……そうなんですね」

彼の大切なところに触れたような気がして、胸がいっぱいになった。

(ジョシュアさんとお父様の、思い出の味……)

私はそっと腰をかがめ、ショーケースを覗き込む。

可愛らしい小粒のチョコレートが、種類も豊富に取り揃えられていた。

(どのチョコレートが、ジョシュアさんの思い出の味なんだろう?)

ジョシュア「ああ、これだ…… 懐かしいな」

ジョシュアさんが、ショーケースの中のチョコレートを指さした。

店員「こちらは創業当時から、昔ながらの技法で作られております」

それは丸みを帯びたシルエットの、シンプルなチョコレートだった。

(なんだか温かみを感じる)

ジョシュアさんはチョコレートを眺めながら、懐かしそうにまた目を細めた。

(そうだ…… このチョコレートを、ジョシュアさんに贈ろうかな)

愛の日は、大切な人に想いを伝える日…ー。

(少し気恥ずかしいけど、素敵な時間を過ごせたし…… お礼がしたい)

思い出のチョコレートなら、ジョシュアさんも受け取ってくれるかもしれない。

そう、心に決めた時…ー。

ジョシュア「このチョコレートを、二つ包んでもらえますか。 一つは軽くラッピングを」

○○「えっ?」

ジョシュア「よければ、君にも食べてもらいたくて」

私が申し出るより先に、ジョシュアさんが私の分までチョコレートを買ってくれたのだった…ー。

 

 

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