ショコルーナの街を、夕焼けが赤く染める…-。
男の子「クレト王子……っ! その……好きな子にチョコレートを贈りたいんですけど……。 どのチョコレートを選べば気持ちが伝わるのかわからなくて」
男の子は必死な様子で、私達にそう問いかけた。
クレト「うーん、そうだなー」
私達は、三人で頭を悩ませていた。
男の子「一日中お店を見て回ったんですけど、選べなくて」
(素敵なチョコレートがたくさんあって、どれを選んでいいかわからないよね)
(気持ちを伝える、か……)
〇〇「あ……!」
クレト「〇〇、どうした?」
〇〇「選べないなら、作ってみたらどうかな?」
男の子「作ってみる……?」
〇〇「うん。手作りって、作る時に想いを込められるし。 世界で一つだけのものになるんじゃないかな?きっと気持ちも伝わって…-」
クレト「それだ!!」
私が言い終わらないうちに、突然クレト君が大きな声を出した。
さっきまで悩んでいたのが嘘と思うほどに、その表情も輝いている。
男の子「ク、クレト王子!?」
クレト「君、明日必ずこの広場に来てね!」
男の子「え……」
クレト「絶対だよ! じゃあ、行こう!〇〇」
男の子と約束をすると、クレト君は城の方へと走り出す。
〇〇「えっ、クレト君!?」
私は急いで、その背中を追った…-。
城へ着くなり、クレト君は今まで書き溜めていたレシピを机から取り出した。
クレト「〇〇、俺は愛の日にチョコレート教室を開こうと思う!」
〇〇「チョコレート教室!?」
クレト「俺、今までレシピをたくさん考えてきたから、手作りをしたい人達の役に立てると思うんだ。 難しいのもあるけど……これとか、工夫すれば簡単に作れるのもあるし!」
クレト君は、目をキラキラと輝かせながらレシピの説明をしてくれる。
〇〇「うん、すごくいいアイディアだと思う」
クレト「だよね! よ~し、新作を考えるぞー!」
クレト君は、新たなレシピ作りに没頭し始めた。
(クレト君、真剣……でも、すごく楽しそう)
(明日は、素敵な日になりそうだな)
真剣に考えている彼の背中に、私は密かにエールを送った…-。