素敵なジンクスのある、割れたハート型のチョコレートを食べた後…-。
私達は再び、街の賑わいの中へと戻っていった。
(クレト君、近い……)
隣を見ると、クレト君の顔が間近にある。
繋いだ手から伝わる彼の温度が、さっきよりも私の胸を甘くざわめかせた。
(ジンクスの効果……なのかな?)
そんなことを思っていると…-。
クレト「あっちの伝統のある店にも行ってみよう! きっと、特別なチョコレートを仕込んでいるはず」
〇〇「あ……うんっ」
(あれ……)
彼の手に引かれながら、私はあることを思い出す。
(クレト君が楽しそうなのは嬉しいけど、私達が街に来た目的って……)
クレト「ああ……いろんなチョコレートを味わえて嬉しいな。 〇〇も一緒にいてくれるし……ね」
照れたような表情を浮かべながら、クレト君は微笑む。
クレト「ああ、すごく楽しいな~……」
〇〇「うん、楽しいね。けれど、クレト君…-」
クレト君に声をかけた、その時…-。
クレト「って! 楽しんでる場合じゃないって! 俺! 楽しすぎて……本来の目的を忘れてた……!」
(思い出してくれたみたい)
クレト君は、愛の日に向けて何かをしたいと考えていて…-。
いいアイディアを探すために、私達は街を歩いていた。
その目的を忘れていたことに気を落とすクレト君を見て……
がっくりと肩を落とす彼に、私は明るく声をかける。
〇〇「ね、クレト君。今からでも遅くないよ。一緒に考えよう」
クレト「……ありがとう、〇〇。よしっ! 俺、今からちゃんと考えるから!」
クレト君は、両頬をパンッと叩いて気合を入れる。
クレト「よしっ、あっちのほうも見てみよう!」
〇〇「うん!」
そして向かった先の店で……
クレト「へ~、店の飾りつけもこってるんだな」
ハート形のライトや風船が飾られていて、愛の日の雰囲気を演出していた。
店主3「そりゃそうですよ、クレト王子!雰囲気ってのは大事ですからね」
クレト「なるほど……雰囲気か」
クレト君は顎に手を当てて、考え込む。
けれど、その表情は晴れないものだった…-。
…
……
街中の店を一通り見終わった頃には、太陽が傾いていた。
私達は広場のベンチに腰をおろし、休憩をとる。
クレト「あー、後少しで掴めそうなんだけどな……」
クレト君は大きなため息を吐き、うなだれてしまった。
(どうしよう、何かいいアイディアはないかな)
悩んでいるクレト君に、何かアドバイスができないか考えていると…-。
??「はあ……」
〇〇「……!?」
すぐ近くで、誰かのため息が聞こえてくる。
(今のため息は、クレト君じゃないし……)
ため息が聞こえた方を見てみると……
(小さな……男の子?)
クレト君と同じようにうなだれている男の子が、隣のベンチに座っていた。
クレト「ん? 君も何か悩んでいるの?」
クレト君はすかさず、その男の子に声をかける。
男の子「ク、クレト王子!?」
クレト「どうしたんだ? 悩みがあるなら言ってみようよ。スッキリするよ!」
クレト君が優しく背中を押すと、男の子は意を決したように話し出した。
男の子「クレト王子……っ! その……好きな子にチョコレートを贈りたいんですけど……。 どのチョコレートを選べば気持ちが伝わるのかわからなくて」
男の子のまっすぐな眼差しから、その真剣さが伝わってくる…-。
クレト「好きな子に贈るチョコレートか……」
傾いていた夕陽に照らされながら、私達は一生懸命考えた…-。