チョコレートの甘い香りに包まれた街中で…-。
―――――
クレト『ああ、そうだ……っ! 実は、もうすぐ『愛の日』なんだけど……』
―――――
クレト君は目を輝かせながら、愛の日について話してくれた。
〇〇「愛の日?」
クレト「ああ、ごめん。〇〇は知らないか! えっと……愛の日は、贈り物を通して大切な人に愛を伝える日で。 で、その日に向けてこの国ではチョコレートを贈るのを奨めてるんだ!」
(贈り物……バレンタインみたいな感じなのかな?)
〇〇「すごく素敵なイベントだね」
クレト「だろ? チョコレートで愛を伝え合うって素敵だよな」
チョコレート、と口にした彼の瞳は、よりキラキラと輝いて見えた。
クレト「それでさ、すごく時間がないんだけど……。 チョコレートが愛を伝えるのに一役買うなら、俺も何かしたいなって思って!」
生き生きとした彼の声色が、私の気持ちも弾ませる。
(チョコレートの話をするクレト君って、いつも楽しそう)
〇〇「そっか、クレト君チョコレート好きだもんね」
クレト「いや! そうじゃなくて! ……いや、そうなんだけど!」
私からとっさに目を逸らしたクレト君は、きまりが悪そうにまた頭を掻き始めた。
クレト「ほ、ほらっ俺も王子だしさ、それで一応は何かしなきゃと思って。 でも、なかなかいい案が浮かばなくって……。 〇〇に相談できたらいいなって思ったんだ」
赤く染まった顔を隠すように、クレト君はうつむいた。
(ああそうか、クレト君……チョコ好きって言われるの、男らしくないからって気にしてたっけ)
(さっきの敬語もそうだけど……やっぱり格好よさに拘ってるんだ)
思わず笑みをこぼしてしまいそうになる私を、クレト君はちらりと上目遣いで見つめてくる。
クレト「ど、どうかな? 〇〇、一緒に考えてくれるかな?」
少し潤んだ愛らしいアーモンド形の瞳が、私にそう訴えかけてきて…-。
〇〇「私でお役に立てるなら、是非」
クレト「本当? マジで!? やった! ありがとう、〇〇」
クレト君は、拳を高く上げると、その場で飛び跳ねながら喜んだ。
(こんなに喜んでくれるなら、嬉しいな)
無邪気にはしゃぐクレト君を見ていると、私まで楽しい気分になってくる。
クレト「じゃあ、まずは街に行ってみよう! いいアイデアが浮かぶかもしれない」
街は、愛の日に向けて楽しい雰囲気に包まれている。
私とクレト君は、その賑わいの中へと誘われるように、肩を並べて歩き出した…-。