チョコレートの国・ショコルーナ 白の月…-。
(おいしそうな香り……)
城下町に漂う甘い香りが、私の鼻腔をくすぐる。
甘い空気を胸いっぱいに吸い込みながら、私はクレト君のことを思い出していた。
クレト「〇〇、俺の国に来てく……ださい。 実は、相談したいことがあって……」
(私に相談したいことって何だろう?)
いつもは明るい彼が悩んでいると知り、私の胸はざわめく。
(クレト君、どうしたのかな?)
彼のことが気になり、自然と急ぎ足になってしまう。
待ち合わせ場所のお菓子広場には、様々な店が所狭しと並んでいた。
ショーウィンドウには、宝石のようにキラキラと輝くチョコレートが並べられ、見飽きることがない。
(あっ、クレト君……!)
クレト君は、店のディスプレイに飾られたチョコレートを真剣に眺めていた。
〇〇「クレト君」
クレト「!」
私が声をかけると、彼は驚いたように目を見開き、すぐに視線を逸らしてしまう。
クレト「あっ、あの……久しぶり……です! 来てくれて……ありがとう……です」
クレト君はしどろもどろになりながら、ぎこちない敬語を使った。
〇〇「クレト君、どうして敬語なの?」
クレト「えーっと、相変わらず……キレイだから緊張して……って、いや、しまして……!」
クレト君の頬が、だんだんと赤く染まっていく。
クレト「って、俺! 何言ってるんだ! ご、ごめん……なさい」
彼は髪の毛をくしゃくしゃと掻き上げながらつぶやき、アーモンド形の大きな目を泳がせた。
〇〇「敬語じゃなくていいよ。その方が私も話しやすいし」
クレト「そ、そう……か? うん、そだな! ……やっぱ大人っぽくて、なかなか難しいんだよなあ」
〇〇「え?」
クレト「うっ、ううん! なんでもない! ありがとう、〇〇!」
自分を納得させるように何度か頷くと、クレト君は私の方をまっすぐ見た。
〇〇「そう言えば……クレト君、相談って?」
クレト「ああ、そうだ……っ! 実は、もうすぐ『愛の日』なんだけど……」
(愛の日?)
初めて聞いたその言葉の響きに、胸が弾んだ…-。