第1話 チョコレートの国、再び

チョコレートの国・ショコルーナ 白の月…-。

(おいしそうな香り……)

城下町に漂う甘い香りが、私の鼻腔をくすぐる。

甘い空気を胸いっぱいに吸い込みながら、私はクレト君のことを思い出していた。

クレト「〇〇、俺の国に来てく……ださい。 実は、相談したいことがあって……」

(私に相談したいことって何だろう?)

いつもは明るい彼が悩んでいると知り、私の胸はざわめく。

(クレト君、どうしたのかな?)

彼のことが気になり、自然と急ぎ足になってしまう。

待ち合わせ場所のお菓子広場には、様々な店が所狭しと並んでいた。

ショーウィンドウには、宝石のようにキラキラと輝くチョコレートが並べられ、見飽きることがない。

(あっ、クレト君……!)

クレト君は、店のディスプレイに飾られたチョコレートを真剣に眺めていた。

〇〇「クレト君」

クレト「!」

私が声をかけると、彼は驚いたように目を見開き、すぐに視線を逸らしてしまう。

クレト「あっ、あの……久しぶり……です! 来てくれて……ありがとう……です」

クレト君はしどろもどろになりながら、ぎこちない敬語を使った。

〇〇「クレト君、どうして敬語なの?」

クレト「えーっと、相変わらず……キレイだから緊張して……って、いや、しまして……!」

クレト君の頬が、だんだんと赤く染まっていく。

クレト「って、俺! 何言ってるんだ! ご、ごめん……なさい」

彼は髪の毛をくしゃくしゃと掻き上げながらつぶやき、アーモンド形の大きな目を泳がせた。

〇〇「敬語じゃなくていいよ。その方が私も話しやすいし」

クレト「そ、そう……か? うん、そだな! ……やっぱ大人っぽくて、なかなか難しいんだよなあ」

〇〇「え?」

クレト「うっ、ううん! なんでもない! ありがとう、〇〇!」

自分を納得させるように何度か頷くと、クレト君は私の方をまっすぐ見た。

〇〇「そう言えば……クレト君、相談って?」

クレト「ああ、そうだ……っ! 実は、もうすぐ『愛の日』なんだけど……」

(愛の日?)

初めて聞いたその言葉の響きに、胸が弾んだ…-。

 

 

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