コロレさんを迎えに行き、城へ戻ってからも、ベリー畑で何をしていたのか、手に隠しているものは何か、コロレさんは教えてくれない……
コロレ「……ごめんね」
コロレさんが、どこか気まずそうに言葉を吐き出す。
○○「コロレさん……?」
コロレ「……っ!」
今まで目を合わせてくれなかったコロレさんが、意を決したように私にまっすぐに向き直る。
コロレ「あともう少しだけ……時間をもらってもいいかな? 貴方に……ちゃんと伝えたいことがあるから」
そう言うコロレさんは、頭の上に葉っぱをつけて、洋服や靴も土で汚してしまっている。
(きっとまた、何かに夢中になってたのかな……)
今までにないくらい真剣なコロレさんの表情をみると、私の胸のもどかしさも消えていく。
○○「確かに……葉っぱがたくさんですね」
コロレ「っ……!」
微笑みかけると、コロレさんと頬がまたぽっと赤く染まる。
○○「じゃあ少し待っていますね」
コロレ「う、うん、ありがとう」
コロレさんは、少しぎこちなく微笑むと部屋へ入って行った。
…
……
一時間ほど後…―。
コロレさんに呼ばれ部屋へ向かうと、バルコニーに立つコロレさんに手招きをされた。
コロレ「……ごめんね。たくさんの時間をもらっちゃって……」
○○「いえ……」
コロレさんの傍に立つと、綺麗に身なりを正して月の光を浴びる姿に改めてその美しさを感じてどきりとしてしまう。
コロレ「それで、ほら……これ……」
コロレさんは、やはり頬を赤く染めながら、そっと両手を私の前に差し出した。
閉じられたその両手がゆっくりと開かれれば…―。
○○「……っ! これ……イエローラズベリー……?」
コロレさんの手の中にあったのは、黄色を綺麗に輝かせる、瑞々しいラズベリーだった。
コロレ「うん。今日、貴方と過ごしてる時に思い出したんだ。 時々、予定よりも早く生ってしまうことがあるって……」
○○「そうなんですね……」
胸がいっぱいになり、上手く言葉が出てこなくなる。
コロレさんは柔らかな笑みを浮かべながら、気恥ずかしそうに視線を下向かせていた。
コロレ「貴方を……驚かせたかったんだ。 ……素っ気ない態度を取ってしまって、僕……謝りたくて……」
○○「じゃあそのために……こんな夜遅くまで?」
葉っぱをつけて、土で汚れながら必死でベリーを探してくれている姿を想像すると……
(嬉しい……)
甘酸っぱい心地が広がって、私の頬も赤く染まっていくことがわかる。
コロレ「うん……本当は新しいお菓子を作って貴方にあげたかったんだけど。 今回は、どうしてだか上手くいかなくて……」
○○「そんなに気にしなくて……大丈夫です」
コロレ「ううん、気にさせてほしいんだ。 だって僕は、貴方のことが……好きだから」
○○「っ……!」
胸を締めつけるような言葉に、今度こそ本当に言葉を失った。
それでもコロレさんは、顔を真っ赤にしつつ優しい笑みで私に話し続けてくれる。
コロレ「でも好きだからこそね……僕は顔が赤くなってしまうのが情けなくて……。 それを隠したくって、貴方に上手く接することができなくて……。 ごめんね、本当に……」
○○「……いいんです」
(コロレさんの今の言葉だけで、私は十分……)
けれど、コロレさんは切なそうに、静かに微笑んで……
コロレ「でも、貴方のおかげで決心がついたよ」
○○「え……?」
コロレ「貴方が悲しそうな顔するのを見て、顔を赤くしてもちゃんと伝えないといけないって。 貴方が好きなら……そんな顔させちゃ駄目だ……って」
そう言い終える前に、コロレさんがぐっと私の体を抱き寄せて……
唇が触れ合う寸前で、ぴたりと動きが止まる。
そして……
コロレ「○○さん……好きだよ。 僕の、恋人になって欲しい」
彼の真剣な眼差しは、今は私から決して逸れることはない。
鼓動が速まると共に、その深く澄んだ瞳から目が離せなくなる。
コロレ「この、イエローラズベリー……受け取って」
ひときわ甘い囁きが告げられたかと思えば……
その唇にイエローラズベリーを食んで、コロレさんの唇が……
○○「っ……」
私の唇と、優しく重なり合った。
(どうしよう……胸が苦しい)
酸っぱいのに甘い、ラズベリーの味のするキス……
○○「……甘い……」
そっと唇が離れると同時に、思わずそうつぶやくと……
コロレ「もう一度……味わってみる?」
熱く潤んだ瞳で甘く問われて……
誘われるように私は、こくりと小さく頷いたのだった…―。
おわり。