月9話 彼を探して

城に戻っても、まだベリーの香りに包まれている気がした。

ー----

コロレ「それより、ごめん、先に散歩を終わらせて、すふれを連れ帰っててもらってもいいかな?」

ー----

(いったい、何だったのかな?)

昼間のことを考えながら、客室で過ごしていると…―。

執事「○○様。お休みのところ申し訳ございません」

○○「いえ。どうかされたんですか?」

ドアを開け、尋ねると……

執事「コロレ様をご存じないかと思いまして……お戻りになられませんもので」

○○「え……!」

(もしかしてまだ、ベリー畑から戻ってないってこと?)

すでに外は真っ暗になってしまっている。

○○「あ、あの……私、探してきます!」

執事「あ、○○様…―」

胸のざわつきを覚えて、私は城を飛び出してしまった…―。

コロレさんを探して、ベリー畑へ向かう途中のこと…―。

前方から見覚えのあるすらりとした長身の男性が見えた。

○○「コロレさん……!」

コロレ「っ! ○○さん?」

コロレさんは驚いて目を丸くしたかと思えば、次にはすぐに慌てて、手に持っていたものを後ろに隠した。

(何だろう?)

不思議に思いながらも、コロレさんが見つかったことにまずは安堵のため息がこぼれる。

○○「よかったです……まだ戻られてないって聞いて、心配になってしまって……」

コロレ「それで僕を探して?」

○○「はい……、そうです」

コロレ「そ、そっか。ごめんね、心配かけて……」

○○「そうです、どれだけ心配したか……! それに、ずっと様子が変だし……私……」

コロレ「……○○さん」

街灯の明かりにうっすらと照らされたコロレさんは、頬をほのかに染めていた。

コロレ「……本当にごめん」

○○「もう、帰れますか?」

コロレ「……うん、帰るところだよ。一緒に……帰ろうか」

(やっぱり……何をしていたかは教えてくれないんだ)

(胸が痛い……)

○○「……はい」

二人並んで歩く夜の帰り道……

すぐ隣にいるコロレさんのことが、とても遠く感じられた…―。

 

 

 

<<月8話||月最終話>>