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コロレ「……あの、もう少しだけ、僕に時間をくれないかな?」
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そう私に告げたコロレさんは、翌日から調理場へこもる時間が長くなった。
根を詰めている様子のコロレさんに、せめてもとお茶を淹れる。
○○「よかったら……どうぞ」
コロレ「っ……あ、ありがとう」
集中の時間から一息つくコロレさんにそっと声をかけると、
すぐに頬を染めて、慌てた様子でお茶を受け取る。
(やっぱり様子が変……もしかして、調子が悪いとか……?)
○○「あの、コロレさん。もしかして……具合が悪いんじゃないですか?」
心配になって問いかけると、コロレさんは驚いた顔でぶんぶん首を振った。
コロレ「そ、そんなことないよ! 違う違う」
○○「でも……顔もとても赤いですし……」
(すぐ顔が赤くなるとは言っていたけど……それにしても、真っ赤だし……)
コロレ「あの、えっと……そう! 湯せんのしすぎで部屋が暑いからじゃないかな。 うん、きっとそうだねっ」
○○「……?」
何か誤魔化しているようにも感じられる言動に、首を傾げる。
けれどコロレさんは……
コロレ「そっ、そうだ。ここ暑いから気分転換にすふれの散歩でも行こうよ」
私の追求からさらに逃れるように、立ち上がったのだった。
…
……
コロレさんと一緒にすふれの散歩で、ベリー畑までやってきた。
爽やかで甘酸っぱい風の吹く畑で、のびのびとすふれを遊ばせる。
○○「いいお天気でよかったですね」
コロレ「う、うん。そうだね……」
○○「気分転換になりそうですか?」
コロレ「えっ……? うん、そう、かな」
調理室が暑かったせいと言っていたけれど、今もほんのりと頬が赤く染まっている。
(大丈夫かな? コロレさん……)
やはり不安になり、彼の横顔を見つめていると……
コロレ「あ……!」
突然、何かを思い立ったように、コロレさんが声を上げた。
見れば、名案でも閃いたかのような笑みを広げている。
○○「どうしたんですか?」
コロレ「あ……ううん! 何でもないよ。 それより、ごめん、先に散歩を終わらせて、すふれを連れ帰っててもらってもいいかな?」
○○「え? いいですけど……コロレさんはどうするんですか?」
コロレ「ん、ちょっとね。お願い!」
何かを隠すように言われて、すふれのリードを渡される。
(コロレさんが……わからない)
(なんだかちょっと、寂しいな……)
胸に微かな切なさを感じながらも、コロレさんの言う通りに先に城へ戻ったのだった…―。