3つのチョコレートの味見の結果、私とコロレさんの意見は同じだった。
コロレさんの顔に、初めて出会った時のような笑みが戻り、嬉しくて仕方なくなる。
コロレ「実はね?いつも一緒にチョコを作ってくれている仲間と意見が合わなくて……。 でもやっぱり、自分の感覚と……それから貴方の感覚を信じるよ! ありがとう! 〇〇さん……!」
〇〇「っ……!」
感激のままに、コロレさんがきつく私の両手を握りしめる。
そのままぶんぶんと上下に激しく私の両手を振った。
〇〇「わ……っ」
(コロレさん、すごく嬉しそうだけど……)
あまりの感激ぶりと、握られた手に動揺していると……
コロレ「あっ……!」
突然、手を握りしめていることに気がついたコロレさんが、顔を真っ赤にして慌てて手を離しかける。
(あ……!!)
コロレ「え……?」
気がつけば、私の方がきつくコロレさんの手を握りしめていた。
(私……つい)
(でも……また避けられてるみたいなのは嫌だ)
そう思うと、握った手に自然に力がこもった。
コロレさんが驚いた顔で、まっすぐに私を見つめ……
それからすぐに、赤い顔をふっと背けた。
〇〇「あの、私……コロレさんに、避けられてるように感じて……。 私、何かしてしまいましたか?」
意を決して問うと、コロレさんはびくりと体を震わせた。
けれどすぐに、困り顔で笑顔になって……
コロレ「降参……」
〇〇「え……?」
コロレ「ごめんね。ちゃんと説明するよ」
真っ赤な顔のまま、正直な瞳を向けられて……
私は、そっと握っていた手を離した…-。
…
……
少し場所を変えようとコロレさんに言われるままに、街へ出てきた。
コロレさんはしばらく緊張した面持ちで黙っていたけれど……
コロレ「あのね……?」
深く深呼吸をしたかと思えば、意を決した様子で話し始めた。
コロレ「僕、貴方に出会って貴方と過ごす時間がすごく楽しくて大好きで……。 こんなマイペースな僕だけど、貴方は構わずにいつだって付き合ってくれて……。 ずっとこんな日が続くと楽しいなって思ったんだ」
それからコロレさんは、私と過ごした時間がどれだけかけがえのない時間になったかを、丁寧にひとつひとつ、私に伝えてくれた。
そして……
コロレ「あの日、車が来てとっさに貴方を抱きしめて……。 そうしたら不意にね……ベリーを食べた時みたいに甘酸っぱい気持ちが湧いてきたんだ。 貴方の肩が華奢だな……いい香りがするなって認識したら……。 途端に、胸が苦しくなって、あ、女の子だって思って……」
コロレさんの言葉を聞けば聞くほど、私まで頬が熱く火照っていく。
早まる鼓動は静まることを知らずに、早鐘を打ち続ける。
コロレ「でも僕、そういうこと意識したらすぐに、赤くなっちゃうから。 赤くなったら、貴方のことが好きだってバレてしまうって思って……」
〇〇「っ……!」
飛び出した『好き』という言葉に、びくりと肩を揺らしてしまった。
(どうしよう。私こそ、きっと今顔が真っ赤だ……)
すると、コロレさんは私をそっと見つめて……
コロレ「ふふっ……貴方の顔、僕に負けないくらい真っ赤だね」
〇〇「っ……」
甘く囁くような声でそう言われ、思わずコロレさんに背を向けてしまった。
〇〇「……コロレさんには……負けちゃいます」
コロレ「え、僕だって……貴方には敵わないかも」
そう言ってくすりと笑ったコロレさんは、そっと私の耳元へ唇を寄せて……
内緒話をするその距離に、秘めやかなときめきを感じると……
コロレ「貴方が、好きです」
〇〇「っ……!」
鼓動の跳ね上がる一言を贈られて、顔から火を噴きそうなほどに熱くなった。
コロレ「ふふっ。見えないけど、きっとまた顔が真っ赤になってるよね」
〇〇「……っ」
コロレ「あのね、〇〇さん……素っ気ない態度を取ってごめんね。 また……来てくれる?」
すぐ傍にいるコロレさんと、視線を合わせることなどもちろんできるはずもなく……
〇〇「はい、もちろんです……」
後ろを向いたまま、私は一つ小さく頷いた。
コロレ「よかったあ……あのね、実は……。 イエローラズベリーの実がなる頃にまたおいでよって誘おうとしたんだけど……。 だけど僕……それまで絶対に待てないことに気づいちゃったんだ。 だからまたすぐに……来てくれるよね?」
甘い内緒話の先に、また一つ頷くと……
コロレ「〇〇さん……こっち向いて?」
コロレさんが、そっと私の体を前に向かせる。
〇〇「コロレさん……」
そこにあったのは、恥じらいと夕陽の光に赤く染まったコロレさんの優しい顔……
コロレ「大好き、だよ……」
私達は、これ以上ないほどに真っ赤な互いの頬を、微笑みながら見つめ合うのあった…-。
おわり。