執事さんから、お願いされたことは……
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執事『実は、先程コロレ様の好きな茶葉が届けられたばかりでして。 せっかくですので、こちらのお茶をお淹れいたします。 〇〇様、こちらをコロレ様にお届けしてもらってもよろしいですか?』
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(忙しいってことだったから、お茶を淹れれば少し休憩になるかもしれない)
私は、早速コロレさんにお茶を届けることにした。
コロレさんが新作レシピを作っているという調理場へ向かうと…-。
コロレ「あ……〇〇……さん」
私を見た瞬間、コロレさんの顔が複雑な表情を作る。
(やっぱり私……迷惑だったかな)
すぐに後悔して、胸が痛むのを感じた。
〇〇「ごめんなさい、私、お邪魔でしたよね……」
コロレ「ううん、そんなことないよ。邪魔なんかじゃない。 邪魔とか、そんな……」
〇〇「コロレさん……?」
コロレさんの、やはりどこか困ったような様子に不安が過ぎる。
〇〇「あの、私やっぱり……」
コロレ「いやっ、本当に邪魔ではないから」
言いかけた私の言葉を遮って、コロレさんがいつもより早口で言い切る。
コロレ「あ……」
その後、綺麗な顔を少し歪ませて、困ったように笑いかけてくれた。
コロレ「本当……なんだよ?」
〇〇「ありがとうございます……でも、連日コロレさんのお時間を取らせてしまっているから……。 お忙しいのに、本当にごめんなさい」
コロレ「そんな……! あの、えっと……参ったな……」
〇〇「……?」
コロレさんが頬を染め、視線を彷徨わせる。
何か考えている様子のコロレさんは、口元に手を当て、それから耳たぶに手を当てて思案顔でまばたきをした。
コロレ「貴方を勘違いさせてしまうなんて、いけないことだよね」
コロレさんが、少し悲しそうに目を細めている。
何故だか勝手に……とくとくと鼓動が速まっていた。
コロレ「あのね……貴方に意見を聞いてもいいかな?」
〇〇「意見……新作のベリーとチョコレートのお菓子ですか?」
コロレ「うん。入っておいでよ。 貴方の持ってきてくれたお茶も、ちょうだい?」
ゆるりと首を軽く傾げて、コロレさんが甘い声で私を誘う。
それだけで、さっきまで感じていた胸の痛みがふっと和らぐのだった…-。