やっと準備が整うと、早速コロレさんと二人で席についた。
○○「いただきます……!」
コロレ「うん、どうぞ召し上がれ」
たくさんのベリーがのったタルトにフォークを差し込み、一口、頬張ってみる。
口の中いっぱいに広がる甘酸っぱいベリーとショコラの味……
○○「ん……すごくおいしい!」
コロレ「ふふっ、よかった」
思わず声を上げて、また一口、すぐにケーキを頬張る。
あまりにおいしくて、どんどんフォークが進んでしまっていると……
コロレ「女の子が笑顔でケーキを食べてる姿って、可愛いよね」
コロレさんがつぶやくように、そう言った。
○○「え……?」
(可愛いって……)
あまりに自然に紡がれた言葉に、ドキッとしながらコロレさんを見つめてしまうと……
コロレ「あ……!」
ぱっと、コロレさんの頬が赤く染まる。
コロレ「ごめん、可愛いっていうのは、その……僕が言いたかったのは……」
真っ赤な顔になったコロレさんは、きつく目を閉じて……
自身の耳たぶをぎゅっと掴んで、勢いよくかぶりを振った。
○○「コロレさん……?」
コロレ「ごっ、ごめんねっ。あの……嬉しいなって思っただけなんだ。 僕はよくベリーとショコラを使ったお菓子を作っているんだけど。 女の子が嬉しそうに食べてくれると……その……すごく幸せな気持ちになって……。 あっ、でももちろんっ、男性にも食べて欲しいんだけどね……」
未だほんのりと染まったままの頬を誤魔化すように、コロレさんはケーキを口に運んだ。
そしてまたすぐに……
コロレ「あ、そうだ。こんなふうに思うのもね、僕自身が考えたレシピだからっていうのがあるんだ」
○○「えっ、そうだったんですか?」
コロレ「うん」
(そういえば、さっきレシピが浮かんだからって、メモを取ってたよね)
○○「いつも、こうしてベリーとショコラを使ったお菓子のレシピを考えてるんですか?」
コロレ「うん、よく考えちゃうかな。この国はいろんな種類のベリーが収穫できるから」
コロレさんは、さっきメモした紙をみながら、楽しそうに教えてくれる。
コロレ「お菓子作りって、少し分量を変えるだけで、おいしくなるんだけど……。 そういうとこが楽しいんだ。それに何より、こうして誰かを笑顔にできる……。 それって僕は、すごく素敵なことだと思うんだよね」
生き生きとしたコロレさんの表情が、私の胸を弾ませる。
○○「ふふ……そうですね、私もそう思います」
コロレ「今もね、いろいろ考えてるんだ。 ベリーとチョコの組み合わせって、ケーキが王道だけれども……。 ケーキじゃなく……コーヒーと合わせたらとか……他のお菓子だったら何が合うのかなって考えたり」
(本当にいろいろ考えてるんだ)
普段はおっとりと柔らかく見える瞳を輝かせて語るコロレさんに、私は……
○○「なかなか奥が深いんですね」
感心したように言うと、コロレさんが嬉しそうに微笑む。
コロレ「そうなんだ。どこまでもどこまでも追求できるよね」
その後もチョコレートやベリーや……たくさんのことを、コロレさんは楽しそうに話してくれた。
甘くておいしいケーキが、私達の会話をいっそう弾ませてくれた…―。