第3話 誰かを笑顔に

やっと準備が整うと、早速コロレさんと二人で席についた。

○○「いただきます……!」

コロレ「うん、どうぞ召し上がれ」

たくさんのベリーがのったタルトにフォークを差し込み、一口、頬張ってみる。

口の中いっぱいに広がる甘酸っぱいベリーとショコラの味……

○○「ん……すごくおいしい!」

コロレ「ふふっ、よかった」

思わず声を上げて、また一口、すぐにケーキを頬張る。

あまりにおいしくて、どんどんフォークが進んでしまっていると……

コロレ「女の子が笑顔でケーキを食べてる姿って、可愛いよね」

コロレさんがつぶやくように、そう言った。

○○「え……?」

(可愛いって……)

あまりに自然に紡がれた言葉に、ドキッとしながらコロレさんを見つめてしまうと……

コロレ「あ……!」

ぱっと、コロレさんの頬が赤く染まる。

コロレ「ごめん、可愛いっていうのは、その……僕が言いたかったのは……」

真っ赤な顔になったコロレさんは、きつく目を閉じて……

自身の耳たぶをぎゅっと掴んで、勢いよくかぶりを振った。

○○「コロレさん……?」

コロレ「ごっ、ごめんねっ。あの……嬉しいなって思っただけなんだ。 僕はよくベリーとショコラを使ったお菓子を作っているんだけど。 女の子が嬉しそうに食べてくれると……その……すごく幸せな気持ちになって……。 あっ、でももちろんっ、男性にも食べて欲しいんだけどね……」

未だほんのりと染まったままの頬を誤魔化すように、コロレさんはケーキを口に運んだ。

そしてまたすぐに……

コロレ「あ、そうだ。こんなふうに思うのもね、僕自身が考えたレシピだからっていうのがあるんだ」

○○「えっ、そうだったんですか?」

コロレ「うん」

(そういえば、さっきレシピが浮かんだからって、メモを取ってたよね)

○○「いつも、こうしてベリーとショコラを使ったお菓子のレシピを考えてるんですか?」

コロレ「うん、よく考えちゃうかな。この国はいろんな種類のベリーが収穫できるから」

コロレさんは、さっきメモした紙をみながら、楽しそうに教えてくれる。

コロレ「お菓子作りって、少し分量を変えるだけで、おいしくなるんだけど……。 そういうとこが楽しいんだ。それに何より、こうして誰かを笑顔にできる……。 それって僕は、すごく素敵なことだと思うんだよね」

生き生きとしたコロレさんの表情が、私の胸を弾ませる。

○○「ふふ……そうですね、私もそう思います」

コロレ「今もね、いろいろ考えてるんだ。 ベリーとチョコの組み合わせって、ケーキが王道だけれども……。 ケーキじゃなく……コーヒーと合わせたらとか……他のお菓子だったら何が合うのかなって考えたり」

(本当にいろいろ考えてるんだ)

普段はおっとりと柔らかく見える瞳を輝かせて語るコロレさんに、私は……

○○「なかなか奥が深いんですね」

感心したように言うと、コロレさんが嬉しそうに微笑む。

コロレ「そうなんだ。どこまでもどこまでも追求できるよね」

その後もチョコレートやベリーや……たくさんのことを、コロレさんは楽しそうに話してくれた。

甘くておいしいケーキが、私達の会話をいっそう弾ませてくれた…―。

 

 

 

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