月SS 贈り物を形に

○○が目を止めていたアクセサリーショップへとやって来た後…ー。

リカ「お前……こういうの好きなの?」

○○「はい、可愛いですよね。あと少しだけリカさんっぽいかなって……」

(俺っぽい?)

(……そうか、なるほどな。あれこれ余計なこと考えちまったけど)

(こいつに一番似合っていて、一番欲しがりそうなものは……)

リカ「そっか……わかった気がする」

○○「なんのことですか?」

リカ「ナイショ」

からかい気味にそう答える俺を、○○が不思議そうな瞳で見つめていた。

(まったく。そんな可愛い顔すんなっての)

(すぐに喜ばせてやるから、もうちょっとだけ待ってろよ)

高鳴る鼓動を落ち着かせながら、店の外に出る。

……

その後、俺は○○への贈り物を用意するため、彼女といったん別れて、細工職人の元へと走った。

リカ「あー、おやじさん。このボックスはこの宝石みたいにして…ー。 あっ、違う違う。もっとショコラみたいな……」

俺の頭の中にある贈り物を形にするため、一生懸命言葉にして職人に伝える。

四苦八苦しながら半日…ー。

やっと、俺の思う○○への贈り物が出来上がった。

その夜…ー。

○○「あの、リカさん?」

リカ「お、待ってた。ほら、こっち来いよ」

膝を叩いて○○を呼び寄せれば……

彼女はふわりと頰を染め、恥じらいながらこちらへ歩み寄ってくる。

(緊張してんだな)

○○の緊張を解くように、そっと手に触れて軽く引き寄せる。

すると彼女は、遠慮がちに俺の膝へと腰を下ろした。

(よし。それじゃあ……)

俺は隠し持っていた二つの箱を取り出す。

(……やばいな。なんか、すげえ緊張する)

(けど……)

リカ「じゃあコレ、はい」

○○「……っ!」

意を決した俺は、内心ドキドキしながら○○に二つの箱を手渡す。

チョコレートそのものを模したようなパッケージの小箱と、繊細なデザインが施された銀のジュエリーボックスを、彼女は驚いたように見つめていた。

○○「綺麗……あの、二つもいいんですか?」

リカ「一つはこの前言ったお前に一番似合うショコラ。で、もう一つは俺がショコラに合わせて用意した」

○○「……ありがとうございます」

○○は、ためらいがちに受け取りじっと箱を見つめる。

(何で開けないんだ?)

(まさか、気に入らねえとか……?)

リカ「早く開けてみろよ」

○○「でも、せっかくのラッピングが…ー」

(なんだよそれ、ラッピングなんか惜しんでどうするんだよ)

(肝心なのは中身だろ。ったく、冷や冷やさせんなっての……)

リカ「……じゃあ、俺が開けてやる」

○○「あっ……」

彼女の手から箱を取り上げて、さっと手をかける。

リカ「こいつ、まるで指輪が入ってるみたいだろ?けど、実際は開けると……」

○○「これってショコラですか!?すごい……」

銀細工の美しいボックスの中では、ビロードに並べられたショコラがきらきらと光を反射している。

(喜んでるみたいだ……よかった)

(こんなの柄じゃねえけど、お前のその顔が見れて本当に嬉しい……)

うっとりとした顔でショコラを見つめる○○に、心が喜びで満たされていく。

○○「綺麗……まるで宝石みたい。 私てっきりこっちの方がショコラの箱かと思ってました」

リカ「そう……俺の本命はこっち」

(お前がもっともっと喜ぶ、とっておきのプレゼントだ)

そう言ってもう一つの箱を開く。

中には……

○○「これ……!」

リカ「そう、俺のつけてるのと、同じペンダントヘッド」

彼女がアクセサリーショップに並ぶネックレスを見て、俺っぽいと微笑んでいた姿を思い返す。

(お前に一番似合っていて、一番欲しがりそうなもの……)

(お前が一番、好きなものは……)

リカ「だって○○が好きなのって結局、俺だよな?」

○○の目が驚いたように見開かれ、頰が真っ赤に染まる。

(なんでいちいち、こんなそそる反応するんだか……)

(こっちまでドキドキすんだろ……バーカ)

少しだけ恨めしく思いながら、箱からペンダントを取り出し……

○○の首筋にそっとつけてやる。

(細い首筋……それにこんな、耳まで真っ赤に染めて……)

堪らずに、彼女の耳へと唇を寄せた。

リカ「宝石みたいなショコラと、ショコラみたいなアクセサリー……。 俺だからこそ用意できる最高のプレゼントだろ?」

甘い挑発で彼女を煽って、誘い込む。

月夜に照らされた彼女の恥じらう姿に、俺はショコラよりも甘い予感を感じていた…ー。

 

 

おわり。

 

<<月最終話