月最終話 好きなもの

気になったアクセサリーショップを見て、店の外に出ると…-。

リカ「よし、調査完了。飯食べて、帰るぞ」

〇〇「えっ、調査? リカさん?」

一人で歩き出したリカさんの背を慌てて追いかける。

(一体、調査って何を?)

謎は解けないまま、リカさんの背中を追いかけた。

……

街で食事をとる時も、結局『調査』のことは触れられず…-。

リカさんは客間まで送ってくれると、私の頬に指を伸ばした。

リカ「じゃ、お前のショコラ、用意してくるわ。また後でな」

〇〇「リカさん、もう行っちゃうんですか?」

背を向けた彼は、私に片手を上げて応じると、部屋を去って行ったのだった。

(リカさん……)

微かに触れられた頬にくすぐったさが残る気がする……

―――――

リカ『よし、調査完了。飯食べて、帰るぞ』

―――――

(リカさん、あんなこと言ってたけど、もしかしてあれって……)

ふと彼の言葉を頭の中で繰り返せば、頬が熱くなってくる。

胸が小さく高鳴り始めて……

(私……期待してるのかな?)

恥ずかしさを誤魔化すように、私は窓を開けて外の空気を吸い込んだ。


……

そのまま日が暮れて、やがて星が夜空に輝き始める。

私はリカさんに呼ばれて、彼の部屋を訪れていた。

(この香りって……チョコレート?)

甘い香りが幸せを私の鼻先に運ぶ。

〇〇「あの、リカさん?」

リカ「お、待ってた。ほら、こっち来いよ」

リカさんは自分の膝を叩いて、腰を降ろすことを私に促した。

(いいのかな? 少し恥ずかしいけど……)

微かに緊張しながらそっと彼の上に座る。

リカ「じゃあコレ、はい」

〇〇「……っ!」

スチル(ネタバレ注意)

彼から手渡されたのは、まるでチョコレートそのもの模したような可愛らしいパッケージの小箱と、繊細なデザインが目に引く銀のジュエリーボックスだった。

〇〇「綺麗……あの、二つもいいんですか?」

リカ「一つはこの前言ったお前に一番似合うショコラ。で、もう一つは俺がショコラに合わせて用意した」

〇〇「……ありがとうございます」

(このパッケージ……これって箱、でいいんだよね?)

(本当のチョコレートで組み立てたみたいで、開けるのがもったいないな)

リカ「早く開けてみろよ」

〇〇「でも、せっかくのラッピングが…-」

彼は眉を下げ、私の顔を覗き込む。

リカ「もったいないって……ラッピングはあくまで飾り。中身を味わってこそだろ。
……じゃあ、俺が開けてやる」

〇〇「あっ……」

リカさんの手が私の手からジュエリーボックスをすくい上げると…-。

リカ「こいつ、まるで指輪が入ってるみたいだろ? けど、実際は開けると……」

〇〇「これってショコラですか!? すごい……」

銀細工の美しいボックスの中では、ビロードに並べられたショコラがきらきらと光を反射していた。

〇〇「綺麗……まるで宝石みたい。 私てっきりこっちの方がショコラの箱かと思ってました」

リカ「そう……俺の本命はこっち」

彼はもう一つのチョコレートそのもののようなボックスを開ける。

〇〇「これ……!」

小箱の中にあったのは……

ダイヤの形をした金のプレートに、蕩けるチョコレートソースがかかったようなネックレス…-。

(これって……!)

私は小箱から彼の顔に視線を移した。

リカ「そう、俺のつけてるのと、同じペンダントヘッド」

(あのお店……リカさんのお気に入りのお店だったの?)

リカ「だって〇〇が好きなのって結局、俺だよな?」

〇〇「……っ」

自信に満ちた顔で言われて、胸が大きく高鳴り出す。

(こんな顔で言い切られたら何も言い返せない……)

リカさんはプレゼントのペンダントをそっと私の首に下げると、私の耳元で低く囁いた。

リカ「宝石みたいなショコラと、ショコラみたいなアクセサリー……。 俺だからこそ用意できる最高のプレゼントだろ?」

〇〇「リカ……さん……」

リカ「バカ、こういう時は名前で呼べよ」

〇〇「はい……」

リカさんの指先が私の髪を耳にかけてくれる……

〇〇「リカ、素敵なプレゼント、ありがとう……」

リカ「ああ、〇〇……」

そっと彼の名前を呼んだ唇に、彼の唇が近づく。

窓から差し込む月光だけが私達を静かに照らすのだった…-。

 

 

おわり。

 

 

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