翌朝…―。
心地の良い朝日を浴びながら身支度をしていると、扉がノックされた。
リカ「おい、いるか?」
(こんな早くから!?)
慌てて髪を梳かして扉を開ければ、普段と変わらない彼がそこにいた。
リカ「よし、出かけるぞ」
〇〇「え? 出かけるって……」
返事もしないままに私は彼に手を引っ張られて…―。
やって来た先は昨日と同じショコルーテのメインストリートだった。
リカ「まずは……飯でも食べるか」
〇〇「……はい」
リカ「何が食べたい? ……なんでもいいって回答はなしな」
〇〇「えっと……」
(連れて来られるまま来たけど、リカさんどんな用事があって私を?)
〇〇「今日って、何かあるんですか?」
リカ「……ん?」
リカさんは様々なショップが立ち並ぶ大通りを見て、猫のように目を細める。
〇〇「……?」
彼の視線の先を目で追いかけると、チョコレートショップの他にも、アパレルショップや雑貨屋などがあり、街は人々で賑わっている。
私はその中にスイーツをモチーフにしたアクセサリーショップを見つけた。
(あ、あのお店のアクセサリー可愛い……)
思わず唇をほころばせた私を見て、リカさんが店先を指差した。
リカ「あの店、覗いてみる?」
〇〇「いいんですか?」
リカ「見たいんだろ」
〇〇「はい、お願いします」
口元だけふっと笑った彼が手を握ってくれる。
(リカさんは今日、お仕事とか……時間は大丈夫なのかな?)
気になりながらも手を繋いで、肩を並べながらショーウィンドウを見れば、心は嬉しさに弾み始めてしまう……
(あ、このネックレス、リカさんがバッグにつけてるのに少し似てる?)
私は彼の手にあるバッグと目の前のアクセサリーを見比べた。
ホワイトチョコレートのようなプレートに真っ赤なイチゴと、ダークチョコレートをあしらったデザインが可愛らしくて、見てるだけでも楽しくなってくる。
リカ「お前……こういうの好きなの?」
〇〇「はい、可愛いですよね。あと少しだけリカさんっぽいなって……」
リカ「……俺っぽい? これが?」
〇〇「はい。あ、私……何かおかしなこと言いましたか?」
不思議そうな瞳で見つめられて、自分が口にした言葉が今さら恥ずかしくなる。
リカ「別に変じゃないだろ」
アクセサリーと私の顔を彼の切れ長の瞳が交互に行き来する。
その時、真剣な顔をしたリカさんの顔が微かにほころんだ。
リカ「そっか……わかった気がする」
〇〇「なんのことですか?」
リカ「ナイショ」
そう言ったリカさんの唇は悪戯っぽい三日月を描いたのだった…-。