リカさんの作ったチョコレートが食べたい…―。
そう言った私に向けられたのは彼の意外な言葉だった。
リカ「俺、今まで自分で作ったことないけど」
○○「そうなんですか?」
まさかの言葉に口元を抑えれば、彼の眉間に皺が寄る。
リカ「チョコレートの国の王子だからって、作れないとダメなのかよ」
○○「いえ、そういうわけじゃないんですが……」
リカ「……俺が得意なのは材料の目利きとか、テイスティングなの。 けど、クレトとかは自分でも作ってるか。んー……」
リカさんは口元に片手をやりながら腕を組む。
(やっぱり難しいのかな?)
リカ「じゃ、3日待て」
○○「えっ、作ってくれるんですか?」
リカ「お前の欲しいショコラを聞いたのは俺だし。 3日もあればいけんだろ。よし、待ってろ」
鼻を鳴らして彼は自信ありげに微笑んでみせたのだった…―。
翌朝…―。
私が目覚めて身支度を整えていると、窓の外に城を出て行くリカさんを見た。
(また街の方に出かけるのかな?)
ー----
リカ「3日もあればいけんだろ。よし、待ってろ」
ー----
(昨日あんなこと言ってたけど、どんなショコラを作るのかな?)
(気になるけれど……)
待っていろと言われた手前、私は静かに彼の背中を見送ることにした。
それから、夜空に星が輝き始めた頃…―。
リカ「……○○、いるか?」
○○「はい」
リカさんの声が聞こえて部屋の扉を開ければ……
リカ「とっておきの一品を作る準備ができたから、明日は城の厨房でショコラを作るぞ」
○○「リカさん……はい、楽しみにしていますね!」
自信たっぷりに腕を組む様子に、期待が胸のうちに膨らんでいく。
リカ「そんなわくわくして、子どもかよ。 とりあえず、明日を楽しみにして今日はもう寝ろ」
○○「……っ!」
彼の形のいい唇がそっと私の額にキスを落とす。
リカ「おやすみ、○○」
○○「……はい、おやすみなさい」
彼が部屋を去っても私の頬は熱くなったままだった…―。
そして翌日、約束通り私はリカさんに城の厨房へ連れて来られた。
調理台の上にはイチゴ、パイナップル、キウイ、バナナと、新鮮なフルーツが一口大にカットされて、お洒落な食器に盛りつけられている。
○○「これって……」
リカ「……わかったか?」
ペティナイフで次々とフルーツの皮を剥くリカさんの横には、スライスアーモンドの入った小皿やフィナンシェ、バームクーヘンといった焼き菓子も用意されている。
○○「もしかして、リカさんの作るショコラって…―」
私が口を開くと、リカさんは言葉の先を待つように深く頷いたのだった…―。