第4話 ダークとリカ

ショコルーテのカフェで、彼からのチョコレートが欲しいとつい口にしてしまった私に…-。

リカ「じゃあ、期待して待ってろ」

彼はそう言って笑ったのだった。

カフェを出て甘いチョコレートの香りの漂う大通りを隣り合って歩く。

リカ「俺のショコラか……」

〇〇「リカさん?」

小さくつぶやかれた声に問いかければ、彼はいきなり歩みを止めた。

リカ「城に戻るぞ」

〇〇「え? はい……」

(いきなりどうしたのかな?)

彼についていけば…-。

そこはショコルーテの城の裏庭だった。

〇〇「……どうして庭から?」

リカ「来客が多い期間なんだよ。さっき恋するショコラの話をしたけど……。 今、城にショコラを持ってきたら、俺が味見してやるってことになってるから。 ダークとしての俺を知ってる奴とかに会うと厄介だろ?」

(そうか、偽名でお城の外に出ていることは秘密だから……)

中庭からそっと城に侵入するリカさんに続いて、私も中に入る。

〇〇「ダークさんがリカさんだって知っても、皆さん驚かない気もしますけど……」

リカ「そんなことないだろ……この国の王子は引きこもりだけど優秀だってことになってんだし」

〇〇「でも……」

(本当のリカさんは実際、こんなに国のことを考えてるのにな……)

少し寂しくなって彼の背中を見る。

するとリカさんは私を振り返って、少し眉を寄せた。

リカ「ダークっていう自由な自分でいられる時間があるから、王子としても頑張れる……そういう感じだから。 見逃してくれよ……わがままで、ガキみたいなことやってるって自覚はあるし」

その時のリカさんは珍しくどこか孤独そうに見えて、私は……

(なんて言ったらいいんだろう……)

胸がちくりと痛んで、私は言葉にできず彼の服の裾を掴んだ。

リカ「……〇〇?」

〇〇「あの……ごめんなさい」

リカ「……なんで謝んの?」

〇〇「……なんとなく?」

リカ「なんだよ、それ」

彼は一瞬間をおいて小さく笑い出す。

〇〇「リカさん?」

(今の……寂しそうに見えたけど、違ったのかな?)

リカ「じゃあ城の中だけど、このまま手を繋いでデート気分で歩くか?」

〇〇「えっ……?」

リカ「ほら、こっちに手を出す」

〇〇「でも……」

(さっきお城に知り合いがいたらって言ったばかりなのに……)

〇〇「あっ」

迷っていれば、彼の手が強引に私の手を取った。

リカ「時間切れ。このまま行くぞ」

城に咲いた花の甘い香りが鼻孔をくすぐる中……

リカ「……お前といると、楽しくていいな、いろいろ忘れられる……」

彼は私に背を向けたまま、小さくそうつぶやいたのだった…―。

 

 

 

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