チョコレートの国・ショコルーテ 白の月…-。
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リカ『新作のショコラごちそうしてやるから、たまには遊びに来いよ』
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彼に招待された私は、期待に胸を躍らせて久々にショコルーテを訪れた。
けれど彼は城を留守にしているらしく、街へ出れば……
チョコレートショップが連なる大通りは大勢の人々で賑わっていた。
その店の一つに、見知った顔を見つけて思わず駆け寄る。
〇〇「リカさん」
リカ「おい、外ではリカって呼ぶなって……それにしても以外に早かったな」
久々に会った彼は店員と話し込んでおり、その手には一粒のショコラが摘まれていた。
リカ「ちょっと待ってろ、今こいつと話してるから」
リカさんの前にいたショコラティエと思われる男性が頭を下げる。
リカ「――それで、このカカオなんだけど、俺としては…-」
(なんの話だろう?)
真面目な顔で話し込む二人に少しだけ疎外感を覚えて、遠くの空を眺める。
大通りはハートの形をしたオーナメントやバルーンでシックに飾りつけられていた。
(可愛い……バレンタインの時期の街みたいだ)
リカ「おい、なにぼんやりしてる、城に戻るぞ?」
〇〇「え?」
いつの間に話が終わったのか、振り向けばすぐ傍にリカさんの顔があった。
蜂蜜色の甘そうな瞳に見つめられて、心臓が慌て始める……
〇〇「ええと、その……」
彼はおかしそうに鼻を鳴らすと、私の額を指先で弾いた。
リカ「なに慌ててんだか。そんなに俺と会うのが楽しみだった?」
〇〇「……っ」
心を言い当てられたような感覚に何も言えなくなってしまう。
すると彼は私の手を引いて店を出た。
(なんだか握られた手が熱く感じる……)
落ち着かないまま辺りを見れば、大通りに面したチョコレートショップはどこも人々で賑わっていた。
〇〇「そういえば、スイーツフェスタでもあるんですか?」
リカ「……さあ、どうだろうな?」
(……違うのかな?)
意味深な笑みを浮かべるリカさんに私は首を傾げる。
リカ「そんなことよりせっかくだし、いろんな店のショコラ食べてみようぜ?」
〇〇「あっ、待ってください」
手を離して一人歩き始めた彼の背を、私は慌てて追うのだった…-。