突然、地響きと共に大きな音が鳴り渡り……
町の男性1「モンスターだ! モンスターが城壁を突き破ろうとしているぞ……!」
悲鳴と混乱が伝染し、町中がパニックに陥る。
プリトヴェン「皆、慌てずに! 城壁から離れ、町の中心部へと避難するんだ!」
凛々しい軍人の顔で指示を出すプリトヴェンさんに従い、町の人々が逃げていく。
○○「……」
(モンスターの襲撃? すごい音が聞こえてくる………)
(アヴァロンのモンスターは、巨大だって……)
突然の出来事に呆然としていると、逃げる人々の波に巻き込まれてしまいそうになる。
○○「……っ!」
プリトヴェン「!!」
すると、プリトヴェンさんに手を引かれ、そのまま彼の腕の中に引き寄せられた。
プリトヴェン「皆、落ち着け! 慌てずに兵士の指示に従って移動を!! 俺達がついている、大丈夫だ!」
凛々しいプリトヴェンさんの声に、町の人達の混乱が落ち着きを見せ始める。
(すごい……)
その姿に、私の前で見せてくれたあの可愛さは微塵も感じられなかった。
プリトヴェン「ここにも危険が及ぶかもしれない。君も逃げるんだ」
私の肩を掴むと、迷いのない力強い瞳でそう告げる。
○○「プリトヴェンさんは……?」
プリトヴェン「俺は城壁へと向かうよ。人々を守ることが、王子としての俺の務めだから」
不安な気持ちを抱いて黙り込むと、プリトヴェンさんは困ったように眉を下げた。
プリトヴェン「ごめん、傍にいてあげられなくて……」
(モンスターと、戦いに……)
それがプリトヴェンさんの責務であり、普段からそう過ごしていることは知っているけれど、いざ目の当たりにすると、どうしようもなく不安な気持ちが込み上げてくる。
○○「……心配です」
プリトヴェン「え……?」
驚いたように見開かれた瞳が、かすかに揺れる。
プリトヴェン「大丈夫だよ。俺達はこんな時のために訓練してるんだから」
○○「わかっています、けれど……」
私の不安を和らげるように、プリトヴェンさんは明るく笑った。
プリトヴェン「大丈夫、俺にはこの盾がついてる。それに今は君が来てくれてるんだ。 絶対、無事に戻って来るから」
○○「はい……」
プリトヴェン「じゃあ行ってくる!」
私の瞳を見つめ、一度しっかり頷くと、プリトヴェンさんは城壁に向かっていった。
(どうか気をつけて……)
祈るような気持ちで、プリトヴェンさんの背中を見送る。
そのとき私の目の前に、小さな女の子が飛び出してきた。
町の女の子「わたし戻る! お人形さんを落として来ちゃったの……!」
町の男の子「だめだ、危ないよ!」
町の女の子「お人形さん取りに行くんだもん! 離してお兄ちゃん!」
女の子は引き止める男の子の腕を振り払って、駆け出してしまう。
(いけない……!)
後を追おうとする男の子を、私は慌てて呼び止めた。
○○「私が追いかけるから、あなたは安全な場所へと逃げて!」
町の男の子「けど……」
○○「必ず連れて帰るから」
町の男の子「うん…わかった……」
町の中心部へ逃げる人々の流れに逆らいながら、私は女の子の後を追って、城壁のほうへと向かった…-。