ラスさんと国王様のやり取りが気になったものの、私はそのままラスさんに連れられ、とある部屋へとやってきた。
ラス「ここがキミの部屋だよ。足りないものがあればなんでも言ってね」
〇〇「ありがとうございます、ラスさん」
お礼を言うと、ラスさんが優しい笑みを浮かべる。
ラス「ねえ、〇〇。慣れない国へ来て疲れてない?」
〇〇「え?」
(確かに、ヴォタリアの雰囲気には少し緊張したかな……)
〇〇「言われてみれば、少しだけ……」
私の返答に、ラスさんが満足そうに目を細める。
ラス「この後は予定もないし、休む前にマッサージなんてどう?」
(マッサージ? あ、セラピストさんを呼んでくれるのかな)
〇〇「そうですね……じゃあ、お願いできますか?」
私はわずかに逡巡しながらも、せっかくなのでご厚意に甘えさせてもらうことにした。
ラス「もちろん。さ、おいで?」
そう答えた後、ラスさんは私の手を引いてベッドの方へと連れていく。
〇〇「え? あ、あの……!」
戸惑う私に構うことなく、ラスさんはおもむろに着ていたジャケットを脱ぎ始める。
〇〇「な、何をしてるんですか!?」
ラス「え? ああ、〇〇は服着たままするのが好き?」
(な、何を言ってるの!?)
(マッサージって、もしかして……!?)
〇〇「あの、ちょっと意味が…-」
ラス「大丈夫。旅の疲れなんて、オレがすぐに忘れさせてあげるよ」
ラスさんは長い尻尾で私の腰を引き寄せると、私を後ろからぎゅっと抱きしめた。
(えっ……!?)
私の背中を抱くラスさんが、耳元に唇を寄せてくる。
ラス「目覚めの後、キミを一目見た時から、この胸に抱くと決めてた……」
容易には逃げられない状況の中、ゆっくりと唇を寄せられ……
(もしかして、このままキス……!?)
ラス「なんだ、照れてるの? ……可愛いね」
〇〇「そんなこと、急に言われても……!」
私は振り返ると、慌ててラスさんの胸を押しとどめた。
ラス「こら、暴れないの」
ラスさんの指先が、私の背中をゆっくりと撫で上げていく。
ラス「油断してちゃ駄目だよ、〇〇。恋の始まりは、いつも突然なんだから…-」
吐息混じりに囁かれ、背筋が痺れるように甘く震えた。
(この感覚は、何……?)
今まで感じたことのないような、強い衝動が体の奥から込み上げる。
ラスさんが持つ不思議な魅力に惑わされ、熱に浮かされたように身を委ねてしまいたくなった、その時…-。
(っ……!)
はっと我に返り、ラスさんの胸元を思い切り突き飛ばした。
ラス「っ!」
〇〇「だ、駄目です! ラスさん、冗談は止めてください……」
突然の出来事に気持ちが追いつかず、心臓が痛いほどに高鳴っている。
ラス「へえ……。 色欲の力に惑わされない女の子なんて、初めてだよ」
ラスさんは驚いたようにそう言うと、私の顔を覗き込んできた。
ラス「まあ、たまには焦らされるのも悪くないかもね」
(悪くないかもって……)
体を震わせていると、ラスさんの手が私の髪を掬い上げる。
ラス「すぐその気にさせてみせるから……覚悟しててね?」
ラスさんは髪をかき上げながら、艶っぽい眼差しを私に向けた…-。