第2話 色欲の力

ラスさんと国王様のやり取りが気になったものの、私はそのままラスさんに連れられ、とある部屋へとやってきた。

ラス「ここがキミの部屋だよ。足りないものがあればなんでも言ってね」

〇〇「ありがとうございます、ラスさん」

お礼を言うと、ラスさんが優しい笑みを浮かべる。

ラス「ねえ、〇〇。慣れない国へ来て疲れてない?」

〇〇「え?」

(確かに、ヴォタリアの雰囲気には少し緊張したかな……)

〇〇「言われてみれば、少しだけ……」

私の返答に、ラスさんが満足そうに目を細める。

ラス「この後は予定もないし、休む前にマッサージなんてどう?」

(マッサージ? あ、セラピストさんを呼んでくれるのかな)

〇〇「そうですね……じゃあ、お願いできますか?」

私はわずかに逡巡しながらも、せっかくなのでご厚意に甘えさせてもらうことにした。

ラス「もちろん。さ、おいで?」

そう答えた後、ラスさんは私の手を引いてベッドの方へと連れていく。

〇〇「え? あ、あの……!」

戸惑う私に構うことなく、ラスさんはおもむろに着ていたジャケットを脱ぎ始める。

〇〇「な、何をしてるんですか!?」

ラス「え? ああ、〇〇は服着たままするのが好き?」

(な、何を言ってるの!?)

(マッサージって、もしかして……!?)

〇〇「あの、ちょっと意味が…-」

ラス「大丈夫。旅の疲れなんて、オレがすぐに忘れさせてあげるよ」

ラスさんは長い尻尾で私の腰を引き寄せると、私を後ろからぎゅっと抱きしめた。

(えっ……!?)

私の背中を抱くラスさんが、耳元に唇を寄せてくる。

ラス「目覚めの後、キミを一目見た時から、この胸に抱くと決めてた……」

容易には逃げられない状況の中、ゆっくりと唇を寄せられ……

(もしかして、このままキス……!?)

ラス「なんだ、照れてるの? ……可愛いね」

〇〇「そんなこと、急に言われても……!」

私は振り返ると、慌ててラスさんの胸を押しとどめた。

ラス「こら、暴れないの」

ラスさんの指先が、私の背中をゆっくりと撫で上げていく。

ラス「油断してちゃ駄目だよ、〇〇。恋の始まりは、いつも突然なんだから…-」

吐息混じりに囁かれ、背筋が痺れるように甘く震えた。

(この感覚は、何……?)

今まで感じたことのないような、強い衝動が体の奥から込み上げる。

ラスさんが持つ不思議な魅力に惑わされ、熱に浮かされたように身を委ねてしまいたくなった、その時…-。

(っ……!)

はっと我に返り、ラスさんの胸元を思い切り突き飛ばした。

ラス「っ!」

〇〇「だ、駄目です! ラスさん、冗談は止めてください……」

突然の出来事に気持ちが追いつかず、心臓が痛いほどに高鳴っている。

ラス「へえ……。 色欲の力に惑わされない女の子なんて、初めてだよ」

ラスさんは驚いたようにそう言うと、私の顔を覗き込んできた。

ラス「まあ、たまには焦らされるのも悪くないかもね」

(悪くないかもって……)

体を震わせていると、ラスさんの手が私の髪を掬い上げる。

ラス「すぐその気にさせてみせるから……覚悟しててね?」

ラスさんは髪をかき上げながら、艶っぽい眼差しを私に向けた…-。

 

 

 

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