罪過の国・ヴォタリア 奏の月…-。
国王「トロイメアの姫よ。よくぞ参られた」
私は国王様の御前で丁寧に膝を折る。
〇〇「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
国王「先だっては、息子のラスが世話になった。改めて礼を言う」
国王様の背後に控えていたラスさんが、私に向かって柔らかく微笑みかける。
ラス「〇〇、久しぶりだね。ずっとキミに会いたかった」
〇〇「はい、私もお会いできるのを楽しみにしていました」
(ヴォタリアについた時は、この国の雰囲気に戸惑ってしまったけど……)
ここヴォタリアでは、昼間でも霧が足元を覆い……
薄い雲に覆われた寒々しい空を、コウモリ達が飛び交っていた。
(噂には聞いていたけど)
(このヴォタリアが、罪を犯した人達が辿りつく最後の流刑地……)
国王「……見ての通り、ここは殺風景な国ではあるが。 〇〇姫を、国賓として丁重にもてなそう」
国王様に礼を返すと、ラスさんが自然な仕草で私の背中に手を添えた。
ラス「挨拶は充分だ。さあ、キミの部屋に案内するよ」
国王「ラス……くれぐれも失礼のないように」
短い沈黙の後、国王様がラスさんに低い声で言い添える。
ラス「ええ……わかっていますよ、父さん」
国王様とラスさんは、互いに目を合わせることもなく……
温度の通わぬような、短いやり取りを交わした。
(この二人……?)
ラス「さあ、行こうか」
何事もなかったかのように微笑むと、ラスさんは再び私を促した…-。