先日のお礼にとプリトヴェン王子から招待された私は、彼を訪ねてアヴァロンの城へとやって来た。
到着した城の中庭では、ちょうどプリトヴェン王子が軍事演習の指揮をとっているところだった。
プリトヴェン「よし、今日の訓練はこれにて終了とする。 予定どおり部隊は明日から3日間、休暇に入る。各自しっかりと身体を休めるように。 それでは解散!」
ザッと音を立て、兵士の方達が一斉にプリトヴェン王子に敬礼をする。
額に手を当て、敬礼を返すプリトヴェン王子の姿は勇ましく、思わず見惚れてしまった。
(プリトヴェン王子、出会ったときとは少し雰囲気が違う……)
そんなことを思いつつ、遠くから眺めていると……
プリトヴェン王子のもとに、一人の男性が近づいていった。
??「おつかれさま」
プリトヴェン「ああ、おつかれ。お前も普段の疲れをしっかり取っておけよ」
??「身体が鈍らない程度に休んでおくよ……ところで、お客様がお見えのようだけど」
プリトヴェン「え?」
視線をこちらに向けたプリトヴェン王子の顔が、ハッと赤くなる。
プリトヴェン「○○……!? い、いつからそこに……!」
○○「プリトヴェンさん、お招きいただきありがとうございます」
プリトヴェン「い、いや、こちらこそ。来てくれてありがとう……」
照れ隠しのように、真っ赤な顔を自分の腕に押しつける。
出会ったときと同じ反応を前にして、なんだか微笑ましい気持ちになった。
(プリトヴェンさんって、もしかして照れ屋なのかな?)
??「じゃあ俺は行くね。応援してるよ、兄さん」
(あ、弟さんだったんだ……)
プリトヴェン「なっ……お前は……!!」
ますます赤くなったプリトヴェンさんの肩を叩くと、彼の弟さんは一礼を残し去っていった。
プリトヴェン「い、今の話は気にしないでくれ……」
○○「はい……?」
プリトヴェン「えっと、とりあえずここじゃ何だな……ちょっと待ってて」
プリトヴェンさんは使いの人に声をかけ、中庭の四阿屋にお茶の用意をしてくれた。
プリトヴェン「軍服のままでごめん。本当はもう少し早く今日の訓練を終わらせる予定だったんだけど……」
白い丸テーブルに向かい合って座ると、プリトヴェンさんは、盾を慎重な手つきで足下へと置いた。
○○「プリトヴェンさんの武器は盾なんですね」
プリトヴェン「ああ。俺は防御専門なんだ。この盾で大事な仲間を守りたくって」
○○「仲間思いなんですね」
プリトヴェン「そ、そうかな」
落ちつきなく視線を泳がせながら、プリトヴェンさんは用意された紅茶を一息に飲み干す。
プリトヴェン「熱っ……!」
○○「だ、大丈夫ですか?」
びっくりして身を乗り出すと、プリトヴェンさんが慌てて身体を引く。
プリトヴェン「だ、だだだ大丈夫! こんなの平気だよ!」
けれど笑いかけてくれるプリトヴェンさんの頬と唇は、赤くなっていた。
中庭にはそんな私達を見守るような、優しい光がキラキラと降り注いでいた…-。